軍法会議2 ページ31
検察側の質問は終わったが裁判官は特に何も質問しなかった。まあ当然であろう。ここにいるものもそう思った筈だ。統合参謀長は陸軍出身であり陸軍が検察をやっている以上コンタクトは簡単に取れるであろう。裁判官の権限が強いなど他国が驚くほど酷い裁判であるがそれを咎められるとしたらもうやっている。もうこのやり方はお約束なのである。時代劇や特撮モノで同じ展開が出てきても目くじらを立てる人間はほぼいないだろう。いたとしても周囲の反応はお察しである。
裁判官が黙っているので次は弁護側の時間である。ヴァンサン司令長官はため息をついて言った。
「今の証人の発言はおかしい。海軍法によれば戦時中であり、予測不能の事態に巻き込まれた状態であり、海軍から報告さえあれば軍港でも民間船の受け入れをしていいとある。私は彼の通信を傍受し該当軍港に報告を入れた。記録に残っていないのはなぜか聞きたい」
彼の反論に証人は口調を変えずに事務的な口調で言い返した。
「電波が乱れておりました。理由は不明ですが……」
「ううん……そうですか……」
どうせ言い返せまいと確信していたヴァンサン司令長官は残念がったであろう。だが、まだ彼には切るべきカードがある。
「では、空きがないというのは？ 被告人が帰還した際、空きはありました。記録を漁れば一目瞭然でしょう」
彼は主張を崩すのは難しいから証人を潰そうと考えたのだろう。そんな中、小さくガッツポーズするヴァンサン司令長官を横目で見て統合参謀長は不敵な笑みを見せた。すると不思議なことに検察側が小声で言い返してきたのである。
「司令長官殿、今はそんなのはどうでもいいのです。次の質問を」
明らかな問題発言。今すぐ彼らは叩き出されるのが当たり前である。だが、そんな常識などという秩序的なものは存在しない。あってもないようなものと言うべきだろう。会議は何事もなく進んでしまったのだから。
その後も証人が呼び出された。前線に出ていないとの批判については前線に出ていることを勲章のようにしており風紀を乱す物だと言われたが、これは前線の空気感を理解していないことへの批判ということでなんとか弁護はできた。衛星の破壊は……司令長官が申し訳なさそうにしている所から言うまでもないだろう。
公判が終わり、バルサ大将は外へ出た。そこは一面真っ暗であり、移動中、道に迷うぐらい目の前が真っ暗だったという。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
デ・ロイテル(プロフ) - 特命さん» ご清覧ありがとうございます。そうでしたか、失礼しました。見つけ次第すぐに対処致します。本当ですか！？ありがとうございます。推敲には力を入れているのでそう言っていただけると嬉しいです。続編の方もよろしくお願いします。 (2018年10月5日 21時) (
レス) id: 707fc28c68 (このIDを非表示/違反報告)
特命 - 楽しく読ませて頂いています。どこかに「機器」が「危機」になっている箇所と、助詞の「は」が重複して「はは」になっている箇所があったようです。勘違いでしたらすみません。これほどの長さの文章で２カ所だけってすごいです。続き楽しみにしています。 (2018年10月5日 21時) (レス) id: 3f4c6d750f (このIDを非表示/違反報告)
デ・ロイテル(プロフ) - 次で50話ですね。キリ悪い…… (2018年10月4日 0時) (レス) id: 707fc28c68 (このIDを非表示/違反報告)
Olivie(オリヴィエ)(プロフ) - デ・ロイテルさん» これからも頑張って！！おうおう、良かった〜……(チャット化しそうなので返信不要) (2018年9月30日 0時) (レス) id: 26b767d003 (このIDを非表示/違反報告)
デ・ロイテル(プロフ) - Olivie(オリヴィエ)さん» いえいえとんでもない！これからも精進しなくては！嫌うなんてないで。三笠と一緒に居れるねんで？ぜーんぜん怒ってへんよ。 (2018年9月30日 0時) (レス) id: 707fc28c68 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：デ・ロイテル | 作成日時：2018年8月12日 0時
