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鍾愛 8 ページ9

いつなら空いてるか、日付調整をしようとした時だった。注文の品がテーブルに運ばれてきて、バターの香りがふわりと漂う。

それは目の前にあるパンケーキのもので、美味しそうだなと何となく思っているとフォークの先に一口サイズに切られたパンケーキを差し出してくる。


「はい、あーん」

『え?』

「疲れた時は甘い物が一番さ」


そう云われて、自分で食べられますとも結構ですとも断れずに少し目線を斜め下に落として失礼します、と控えめがちにパンケーキを口に含んだ。
猛烈に恥ずかしくて味なんかしないかもしれないと心配していたが、口の中に蜂蜜の甘さとバターの風味がふわりと広がりとても美味しいと感じた。

パンケーキなんて暫く食べてなかった。


『…美味しい』

「ね?」


感嘆の声を漏らすと太宰さんは微笑んだ。また、パンケーキを一口サイズに切り分けて差し出してくるのでもう大丈夫です!と羞恥から断る。

「駄ぁ目。君の為に頼んだんだから」

『私の、ため…?』

「そう。お酒ばかり飲んでいたら体に悪いよ」

それは太宰さんにも云える事ではないのかと思ったが私は大人しくパンケーキを口にした。

元々あまり量もなかっし、心地よい甘さにあっという間に完食してしまった。

礼を云った後、いつ会うか日を決めた。

私は組織を戻ったその後はスキップでも出来そうなくらい機嫌が良かった。


「何だ。其の落ち着かない様子は」

『偶々立ち寄った喫茶店で凄くいいことがあったの』

「…楽しそうで何よりだ」


其れは他人に無頓着な芥川が指摘するほどだった。




___________



自分のよく行く喫茶店でAと偶々遭遇した次の日。


私はまた其の喫茶店に来ていた。値段もお手軽だし、何より味が美味しいしツケが効く。そして一時的にだが煩く追いかけてくる同僚の目から隠れることができる。


いつもの如く味わい深い珈琲を口に含みあれこれと考えごとを始める。ジサツの算段や、同僚や元相棒に仕掛ける悪戯についてや。


「太宰さん」

「やぁ、春雛ちゃん」


"春雛ちゃん"

彼女は此処でバイトしている大学生だ。
名前に似合う可愛いらしい容姿で彼氏もいなかったので以前心中に誘った時からよく話すようになった。

とにかく明るいという言葉が良く似合うそんな彼女が真剣な顔で何やら私に頼みがあるらしい。


「太宰さん、武装探偵社の人なんですよね。依頼があるんです」


だから、そんな彼女からの願いは断りきれなかったのが事の発端だった。

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 文スト , 太宰治   
作品ジャンル:恋愛
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あい - ??? (1月29日 23時) (レス) id: 59cf03caf8 (このIDを非表示/違反報告)
あい - 更新中でしょうか?ワクワクです (1月29日 20時) (レス) @page43 id: 59cf03caf8 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - これ太宰さんどうなっちゃうんでしょうか……あと文才ご凄くありますね! (1月22日 11時) (レス) @page31 id: 68fda9e290 (このIDを非表示/違反報告)
- こういう系あまり読み続けられないんですがこれは一気に読めちゃいました…!文章能力すごい高いですね…尊敬…更新待ってます!頑張ってください! (8月26日 15時) (レス) id: efb8355445 (このIDを非表示/違反報告)
ライム - こういう物語って大体中也ポジの人は振られちゃうので、この展開メッチャ好きです!私が中也推しなのもあるかもですけど、wとにかく更新楽しみにしてます! (2023年3月25日 3時) (レス) @page42 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:桜雪 | 作成日時:2020年1月25日 21時

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