愛吐 ２４ ページ30
_________
"あの女構成員が俺たちの上司？笑わせないでくれよ"
耳に届いた言葉は、紛れもなく事実だった。
私の様な下級構成員が何故急に昇進したのか、理由がわからなかった。
まだ義務教育課程を修了し、上京してきた私には聞き流せるほど強くはない。陰口の一つが物凄く刺さっていた。
真っ当な職につけるほどの学歴や人脈がない自分がどうにも悔しかった。
見たくもない人の血を毎日の様に見せられこの手に握るのは銃と刀。
正に私の入った職場はこの街の、この国の暗部そのものだった。
『……ッ』
悔しくて、惨めで唇を噛んで涙を堪えた。崩れ落ちて…それでも涙を零すのはどうにも堪えた。
「A、昼の会議の事で…」
自分が元々働いていた小さな事務室の何倍も広い部屋の物陰で座って涙を堪えていると、入ってきたのは太宰幹部だった。
太宰幹部は何故だか知らないがたかだか一介の構成員の私のことによく目をかけてくれていた。
彼に、こんな顔を見せたらきっと笑われるか…引かれるか。何故なら年は殆ど変わらないのに彼が組織に大きく貢献している実力者だからである。
そんな彼にこの姿を見られたくなくて、息を潜めてじっと佇む。
すると沈黙に耐えかねたのかいないのか…と呟いた後扉の閉まる音がした。
良かった、出て行ってくれたかと安堵すると同時に気の緩みから目に溜まっていた涙が一粒こぼれた。
それは止まることを知らずにどっと押し寄せてきてポロポロと抱えた膝にシミを作る。
『うっ………くッ』
落ち着いて呼吸を整えようとすればするほど嗚咽が漏れる。
そんな時に背後で足音が聞こえたと思うと声をかけられた。
「いた。そんな所で何してるんだい？」
声からしておそらく、いや絶対太宰幹部だった。
彼に、こんな姿を見せたくないのに…どうしようどうしようと頭の中を引っ掻き回すが答えなどでず、精一杯涙をごしごし拭いた後立ち上がって笑って見せた。
『余りにも部屋が広いもので浮かれていたら転んでしまったんです。ご用件はなんですか？』
苦し紛れの云い訳に自分でも呆れ果てていたが、太宰幹部は表情も変えずにふぅん、とだけ云ったあと私が同行した会議のメモを書類にして提出してほしいと云う事を述べた。
了承の返事をしてそれで彼も出ていくものだと思ったので私も仕事をしようと切り替えると彼は私の手首を掴んだ。
「私と目を合わせてよ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1667人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桜雪(プロフ) - りかまるさん» コメントありがとうございます。応援してくださる方がいて本当に感謝してもしきれません。拙い物語ですがこれからもよろしくお願いします、！ (2019年4月13日 12時) (
レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
桜雪(プロフ) - のら猫さん» 10分、、それはすごい、、！コメントありがとうございます！自分のペースで頑張ります！ (2019年4月13日 12時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
桜雪(プロフ) - びあんさん» コメントありがとうございます。やっぱり小説を書くのってとても労力のいることだと思います。びあん様も同じ作者の身として無理のない程度に頑張りましょう！ (2019年4月13日 11時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
桜雪(プロフ) - sonataさん» ありがとうございます。sonata様の作品とても素敵でした、、！大好きだなんて言葉を頂けてとても嬉しいです。お互い頑張りましょう！ (2019年4月13日 11時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
りかまる(プロフ) - ゆっくりでも大丈夫です。無理なく、執筆して頂けたらと思います。応援しています！ (2019年3月24日 22時) (レス) id: dbac4f4de5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：桜雪
| 作成日時：2018年12月29日 21時
