約束事 ページ10
「――ここだよ」
「ここって――雑貨屋?」
見るからに、先ほどから通り過ぎている雑貨屋とそう差は無いようなのだが、一体このお店に何の用があるのだろう?
たずねるように総司を見ると彼は私の手を放してスタスタと店に入るなり、店主と思しき人に「沖田です。この前のありますか?」と言ってそのまま店の奥へと行ってしまった。
わけのわからない私はぽつんとその場に放置されたが、ほどなくして二人は戻ってきたのだ。
「おおきに。またおいでおくれやす」とお店ならではの言葉を背に受けながら、私たちはまた通りを歩き始めた。
「ねえ、総司。さっきのってなんだったの?」
「雑貨屋の?―――あとで教えるよ。次はあそこね!」
「また秘密か・・・」
内心ため息をつきながら、私は手を引いていく彼について行くしかないのだ。
―――結局、夕刻までいろんな所に連れ回された。
あれから鍛冶屋、呉服屋、和菓子屋、茶屋・・挙げたらあと何個か出てきそうだが、彼はそこで何を買うわけでもなく、せいぜい茶屋で私にお茶とお茶請けを奢ってくれたくらいだ。
最初の雑貨屋のこと意外では見て回るくらいだし、何を目的に回っていたのかわからない。
「総司、今日はお茶奢ってくれてありがとうね」
「あれ、前に奢ってもらった時に今度は僕が奢るって言ったでしょ?」
「・・・そんな事あったっけ?いつ頃よ?」
「えーっと、井吹君がいた頃だから・・・三年前?」
「あー・・龍之介とか懐かしいね。―――そうか、もう三年経ったんだ」
夕日を背にしているせいで目の前で手を繋いでいる二人の細長い影を見ながら、京の町も、新選組も、私と総司の関係もといろいろな物が変わったなとしみじみ感じていた。
総司も同じようで、小さく「いろいろありましたよね・・・」と呟いた。
なんとなく暗い雰囲気のまま屯所の近くまで来ると、総司は思い出したように私の手を引っ張って道を外れる。
行く先は近くの川で、ここは人通りが少なく龍之介の"仮の暗殺"に使った場所だ。
橋の真ん中。ちょうど総司と龍之介が斬り合った場所に来ると総司は私に向き直った。
そして緊張したように視線をすこし泳がせ、夕日のせいかすこし赤く見える顔のまま深呼吸を二つほどすると、真剣な顔を作り、袂から先ほど雑貨屋で受け取った小ぶりの箱を取って差し出した。
「―――これ、受け取ってくれないかな」
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まんさ(プロフ) - Mさん» お久しぶりです!続編書いてきました!・・・そんな、上手だなんて――ありがとうございます!(´∇`)続編でもまたよろしくお願いしますね! (2015年8月4日 22時) (レス) id: 647a4018e9 (このIDを非表示/違反報告)
M - まんささん» 本当ですか!?+。:.゚ヽ(*´ω`)ノ゚.:。+゚。え、まんささん上手に書けているじゃないですか?そんなに気にしなくても大丈夫ですよ!!それにしても、沖田さんが風邪…ねぇ?笑笑(*^^*)看病したい← (2015年7月28日 0時) (レス) id: 7f80429ab2 (このIDを非表示/違反報告)
まんさ(プロフ) - Mさん» 伊東さん斬るまで後数日・・ハアハア((( そろそろこの小説も次の章へと行きます!なんかグダグダしてきてますし、次の章からはシャキッとしたのが書けたらいいな・・・ (2015年7月27日 8時) (レス) id: 647a4018e9 (このIDを非表示/違反報告)
M - まんささん» 今すぐにでも!!笑笑(*^^*) (2015年7月24日 14時) (レス) id: 7f80429ab2 (このIDを非表示/違反報告)
まんさ(プロフ) - Mさん» ここからはわりと飛ばし飛ばしにやっていくつもりですが、何はともあれ熱いシーンが無い…(´・ω・`)伊東さん早く斬りましょう! (2015年7月24日 0時) (レス) id: 647a4018e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まんさ | 作成日時:2015年4月27日 19時