ままならない ページ45
そういえば、総司を朝から見かけないと一に聞いてみると、朝一で幕府の要人の護衛にと行ってしまったらしくあさってまで戻らないらしい。
私たちがここを出るのもあさって。
会えればいいのだけど・・会って、どんな顔で伝えたらいいのだろうか。
総司にこの命を教えるわけにもいかないし。
悶々と考えるうちに時は過ぎ、屯所を出る日になっていた。
夕刻に発つと伝えられた私は裏庭の桜の木を見ていた。
二日前はちらほらと咲いていただけの桜が、まさか二日で満開になるとは思わなかった。
――少し離れたところでは、風に乗って舞う桜たちに包まれながら一と千鶴が話している。
しばしの別れ、それを惜しんでいるのだろう。
ここ最近の二人はだいぶ良い感じになっていた。
一はいつの間にやら名前で呼んでいたし、気がついているのかわからないが千鶴がお米をよそう時に一の分がよく割り増しされている。
なのに、とんだ邪魔が入ってしまったな。
あまりじろじろと見るのも良くないと、また満開の桜に目をやろうとした瞬間―――背後から来た人物に強く強く抱きしめられた。
振り返らずともわかるぬくもりや香りに、なぜか胸が締め付けられる。
―――ああ、この人としばらく会えなくなっちゃうんだ。
目頭が熱くなりつつあるのを感じながら、私を抱きしめる剣術で鍛え上げられたたくましい腕にそっと手を触れると、力は緩み、私は彼の方へと振り向いた。
「・・・ごめんね、総司」
「―――どうして?何でここを出て行くの?僕が、何か気に障ることしちゃった?」
「違う、違うんだよ総司」
「・・行かないで、ほしい。もう離れ離れはこりごりだよ」
「・・・ごめんね」
十数年前、私は総司たちを置いて外国へと行った。
それがこの子の心にどれほどの影響を及ぼしたのかはわからないけど、今それを思い出して悲しい気持ちになるくらいには大きな出来事として記憶されているらしい。
唇を噛み締めている総司の肩口に額を押し当てて、私はただ何度も謝り続けた。
総司も総司で私を離すまいとしているのか強く抱きしめてくれたが、その腕はわずかに震えていた。
・・・なんとも、人生ままならないものだな。
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まんさ(プロフ) - Mさん» お久しぶりです!続編書いてきました!・・・そんな、上手だなんて――ありがとうございます!(´∇`)続編でもまたよろしくお願いしますね! (2015年8月4日 22時) (レス) id: 647a4018e9 (このIDを非表示/違反報告)
M - まんささん» 本当ですか!?+。:.゚ヽ(*´ω`)ノ゚.:。+゚。え、まんささん上手に書けているじゃないですか?そんなに気にしなくても大丈夫ですよ!!それにしても、沖田さんが風邪…ねぇ?笑笑(*^^*)看病したい← (2015年7月28日 0時) (レス) id: 7f80429ab2 (このIDを非表示/違反報告)
まんさ(プロフ) - Mさん» 伊東さん斬るまで後数日・・ハアハア((( そろそろこの小説も次の章へと行きます!なんかグダグダしてきてますし、次の章からはシャキッとしたのが書けたらいいな・・・ (2015年7月27日 8時) (レス) id: 647a4018e9 (このIDを非表示/違反報告)
M - まんささん» 今すぐにでも!!笑笑(*^^*) (2015年7月24日 14時) (レス) id: 7f80429ab2 (このIDを非表示/違反報告)
まんさ(プロフ) - Mさん» ここからはわりと飛ばし飛ばしにやっていくつもりですが、何はともあれ熱いシーンが無い…(´・ω・`)伊東さん早く斬りましょう! (2015年7月24日 0時) (レス) id: 647a4018e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まんさ | 作成日時:2015年4月27日 19時