鴨鍋 ページ14
夕刻ごろになって、千鶴が夕餉の準備をしているのを手伝いに行くと、千鶴と、帰ってから土方さんにこってり絞られていた平助がなにやら鳥をさばいていた。
「千鶴、それは・・・?」
「おっA、いいところに!ちょっと手伝ってくれよ!」
「いいけどそれなに?」
「鴨(かも)です。さっき平助君が捕ってきてくれて、今日は鴨鍋にすることにしたんです」
「・・鴨鍋とはまあ、ずいぶんと豪勢だね」
「捕ってきた」のが少し気になったが、とりあえず鳥をさばくのは二人に任せて、私は鍋の用意を始めた。
「――うんっまぁー!!」
夕餉に鴨鍋を出し、それ皆で囲んで食べると平助と新八を筆頭に皆歓声をあげて喜んでくれた。
総司はやはり予想通り、葱を器用に回避しつつ鴨のお肉を食べている。
一もそれには気がついているようだけど、何も言わず鍋に舌鼓を打っている。
普段からあまり多く食べる方じゃない二人も、いつもより箸を進める早さが違うように見えた。
鍋の具財を追加する係として、皆と一緒に鍋をつつけないのは残念だが、あとで千鶴と一緒につつくとしよう・・。
「・・鴨鍋なんて、豪勢だね」
「はい。平助君が頑張ってくれたんです!」
「―――局長と副長はまだ外か?」
「そうだね。・・まあ、二人の分は取っといてあるから、気にせずに食べなよ」
私がそう言うと返事の代わりに食べる速度を上げた新八と平助が、たまたま同じ肉に箸をつけてしまったばかりに肉の引っ張り合いというくだらない、しかも行儀も悪い勝負を始めた。
それを千鶴が口頭で注意するが、この二人を止めるには土方さんでないとダメだ。
二人が勝負に夢中になっている間に、同じ鍋をつついていた一と総司が大きめの肉を取っていくのが見える。
「総司、ちゃんとお肉以外も食べないと駄目だからね」
「・・・はーい」
「もちろん一もだからね?」
「・・・わかっている」
先ほどから他の具に手をつけない二人に注意すると、仕方なしとばかりに手をつけ始めた。
・・・総司の場合、葱は避けていたが。
―――やはり皆お肉が食べたいんだろうな。
しばらく新八と平助の勝負を見守っていると、廊下の方から足音が二人分聞こえてきた。
「土方さんたちだ」と確信した私は二人の勝負事を止めようとしたが、声を上げる前に肉が二人の箸から滑って宙を舞った。
それは大きく弧を描き、障子を開けた土方さんの額に―――ピタッと・・・。
・・・やっちまったね。
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まんさ(プロフ) - Mさん» お久しぶりです!続編書いてきました!・・・そんな、上手だなんて――ありがとうございます!(´∇`)続編でもまたよろしくお願いしますね! (2015年8月4日 22時) (レス) id: 647a4018e9 (このIDを非表示/違反報告)
M - まんささん» 本当ですか!?+。:.゚ヽ(*´ω`)ノ゚.:。+゚。え、まんささん上手に書けているじゃないですか?そんなに気にしなくても大丈夫ですよ!!それにしても、沖田さんが風邪…ねぇ?笑笑(*^^*)看病したい← (2015年7月28日 0時) (レス) id: 7f80429ab2 (このIDを非表示/違反報告)
まんさ(プロフ) - Mさん» 伊東さん斬るまで後数日・・ハアハア((( そろそろこの小説も次の章へと行きます!なんかグダグダしてきてますし、次の章からはシャキッとしたのが書けたらいいな・・・ (2015年7月27日 8時) (レス) id: 647a4018e9 (このIDを非表示/違反報告)
M - まんささん» 今すぐにでも!!笑笑(*^^*) (2015年7月24日 14時) (レス) id: 7f80429ab2 (このIDを非表示/違反報告)
まんさ(プロフ) - Mさん» ここからはわりと飛ばし飛ばしにやっていくつもりですが、何はともあれ熱いシーンが無い…(´・ω・`)伊東さん早く斬りましょう! (2015年7月24日 0時) (レス) id: 647a4018e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まんさ | 作成日時:2015年4月27日 19時