８drops ページ9
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｢おばちゃん！生姜焼き定食1つね！｣
『はいはい、いつもありがとね』
今日は檜山くんと取ってる講義の時間が違うから、お昼ご飯は別々で。
大好きな学食に行けば、まだ少し早い時間だからか
席は随分空いているみたいだった
｢今日のお味噌汁なにー？｣
『なめこ。はいどうぞ、』
｢えーやった！おばちゃんありがと！｣
『いーえ、午後も頑張るんだよ』
ゆっくり話す学食のおばちゃんと一言二言交わすこの時間も、実はなんとなく好きだったりして
いつもあったかくて美味しい定食を出してくれるこの場所に、いつも俺は通ってる。
やっぱりご飯は一人で食べるより誰かと食べた方が美味しいし、
湧くんとか居たりしないかなーなんて、見渡したガラガラのそこ。
｢！、｣
今日は、いい日なのかもしれない。
もしかしてキューピットかなんか、俺についてる？？
…となり、行ってもいいかな。
いやいきなりとなりはちょっとあれか。
じゃあさりげなく、さり気なく行こう。そうしよう。
｢…えと、ここいいです、か？｣
A｢！どうぞ…あ、｣
｢ありがとうございます、｣
これってさり気ない？むしろわざとらしくない？
あ、って言ったってことは、昨日の俺のこと
覚えてくれてたって思っても、いい…？
｢あの、昨日はごめんなさい、突然｣
A｢え、いや全然大丈夫です、｣
｢1人っすか？俺も今日は1人で。｣
A｢ひとり、です。｣
斜め前に座った席。
昨日よりも近いその距離に、なんだか少しだけ緊張する。
｢お名前、笠原Aさん、で合ってます？｣
A｢はい。…覚えててくれたんですか、？｣
｢そりゃ聞いたの俺ですし(笑)
俺、深田竜生っす！よければ、よろしくお願いします｣
差し出した手のひらは、握られることはなかったけど
代わりに、にこりと微笑んだその子に
俺も思わず、ニカッと微笑み返して
少しだけ不思議な雰囲気を感じながら
豚肉の生姜焼きとご飯を頬張った。
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作者名：スイ. | 作成日時：2021年10月1日 20時
