検索窓
今日:3 hit、昨日:25 hit、合計:30,962 hit

ページ22

Aside




窓を叩きつける雨の音でふと目が覚める。


確か夜から明け方にかけて東京を台風が直撃するってお天気お姉さんが言ってたっけ。


枕元の置き時計はもうすぐ3時になろうとしていた。




横にいる淳太くんはいつものように優しい寝顔で寝息を立てている。


起こしちゃダメだ。これは私が弱いで片付く問題なんだから淳太くんの睡眠を邪魔してはいけない。

そう思ってもう一度眠ろうとする。




だけど、一度耳に入った雨音は激しくなるばかりで僅かな焦りすら覚えながら耳を塞いで布団を頭まで被った。



この雨の量、音。隙間風の音。

まるであの日みたいだった。




10年以上経った今でも苦しめるたった1日の出来事。






最初は本当に普通の優しいお母さんだった。

女の子が一度は憧れるような理想的なお母さん。

かわいい服や靴、絵本やおもちゃなんかも買ってくれて、買い物に行けば「お菓子は1個だけよ〜?」なんて笑いながら手を繋いで歩く。

怒ると怖かったけどそんな優しくてかわいいお母さんが大好きだった。




なのにいつからか。

「お母さん今忙しいの」と幼稚園で作った作品を見てくれなくなり、話も聞いてくれなくなった。


もちろん、その時だけだと思ってたから別の日にも何回も話しかけると怒鳴られて叩かれた。


「うるさい」「邪魔」「こっちこないで」


私が何か些細な行動をする度にお母さんは手を挙げるようになった。


ご飯もない。服もない。いつの間にか部屋はゴミだらけで生活するスペースがない。

お母さんはほとんど家にいない。


そんな生活が続いて慣れてきてしまったころ。




久しぶりに家に帰ってきたお母さんは雨に打たれていて髪も服もびしょびしょ。


そして泣いていた。



『...っ、おかぁ、さん、?...だいじょうぶ、?』


「、、うるさいっ!」


『っ、、ごめんなさい...』


「...あんたのせいでっ、、、!!」


「あんたのせいでお母さんの人生めちゃくちゃよ!!」


どんなことをされても私にとってたった1人のお母さんで、またいつか笑ってくれるんじゃないかって期待していた。



本当に大好きだった。




「あんたなんか、産まなきゃ良かった!!!」




そこからはたくさん叩かれて、殴られて。


目が覚めると病院で。



最後に見たお母さんの顔は涙でぐちゃぐちゃで、怒ってて、でもどこか寂しさや儚さみたいな表情。


忘れられるわけがない。

・→←黄



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (59 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
270人がお気に入り
設定タグ:west. , 病系 , 短編集
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

あおりんご(プロフ) - ゆぴさん» ゆぴさん!!いつもコメントありがとうございます♡ご期待に応えられるよう頑張ります!"٩(ー̀ꇴー́) (7月25日 8時) (レス) id: 567e367e2d (このIDを非表示/違反報告)
ゆぴ(プロフ) - 新作!!こちらも楽しみにしてます♡!! (7月24日 22時) (レス) @page1 id: a2dc47a3e3 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:あおりんご | 作成日時:2023年7月24日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。