【◇】稲実エースが惚れちゃった (ページ26)

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『みんな、こんな所でどうしたの？』
カ「やーっと巣から顔出しましたよ、アイツ。」

グラウンドを見ると、成宮が走っている。

　『あ、ほんとだ。』
矢「このまま消えてくヤツじゃねーとは思ってたけど
　まさか10日もかかるとはな。」
白「自分に対して求めるものが大きければ大きいほど
　失敗した時のダメージもでかくなる。
　もしかしたらコイツ...俺たちが思ってた以上の男かもな。」
　『みんなは成宮のこと、信じてたんだね。』

成宮、こんな風に見守ってくれるいい仲間がいるじゃん。

今日の所はそっとしておこうとみんなは寮に戻る。
私は監督と待ち合せの場所に向かおうとすると
カルロスに呼び止められた。

「A先輩。」
『どうしたの？』

そういえば、新チーム始まって以来、1年生と接することも
増えて、こんな風に名前で呼んでくれることも多くなり
距離が縮んだみたいでちょっと嬉しい。

「実は昨日の鳴と先輩の寮での会話、聞いてました。」
『えっ、あーあれね...。』
「たまたま通りかかって。今の鳴には、すげぇ効いたと思います。」
『私、絶対成宮に嫌われたわ。』
「それは絶対ないっすよ。」
『なんでよ、優しい言葉の一つや二つ、かけるでしょ、
マネージャーなら。』
「別にあいつは優しさなんて求めてないですよ。
あんな風にガツンと言われる方が効いてます。」
『ならいいけど..。カルロスってさ、気配りできるし優しいよね。』
「あざす。」
『でも上の服着て。』
「うす。」

監督の車の中で、さっきの出来事を話す。

『監督、成宮やっと出てきて走ってましたよ。』
「そうか。」
『ペナルティ、与えるんですか？』
「如月はどう思う。」
『どんな理由があれ、さぼったのは事実ですから。
ペナルティを与えないと他の部員にも示しがつきません。
それに、ペナルティでちょうどなまった身体を
元に戻せるんじゃないですか？』
「同じ考えだ。練習ではしばらくボールは触らせない。」
『はい。』
「成宮は如月によく懐いてるようだな。」
『ああー、はい、まぁ....。でも多分嫌われました。』
「何かあったのか。」
『昨日、落ち込んでるところに結構きつく言ってしまいまして。』
「フッ..。そうか。如月はそれでいいんじゃないか。
その方が成宮も成長できるだろう。」

監督がこんな風に笑ってる顔を身近に見たのは初めてだった。
厳しいことを言いながらも、監督こそ成宮を信じているに違いない。