【◇】稲実エースが惚れちゃった (ページ24)

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そろそろ帰ろうかと思っていたところで雅がやってきた。

「A、まだいたのか。」
『雅こそ、まだバット振ってたの？』
「やることねぇしな。」
『キャプテンで4番だもんねー、落ち着かないよねー。』
「うるせぇ。もう帰るんだろ、コンビニ行きてぇからついでに送る。」
『私もコンビニ行きたい。アイス食べたい。』

甲子園の話し、明日からの新チームの話し、
帰りながら雅とは話が尽きなかった。

「どれにするか決まったか？」
『これ！奮発してハーゲンダッツ！！』
「じゃあ貸せ。」
『え！？奢ってくれるの？？』
「今日休みなのに色々やってくれた礼だ。」
『雅ってば、男前。』
「いいから先に外で待ってろ。」
『はーい、ありがと！』

コンビニの前で、奢ってもらったアイスを食べる。

『今日本当の用事は、先輩に返事することだったんだよね。』
「ああ、あれか。断ったんだろ。」
『なんで分かるの？』
「夏大決勝の日、お前を送った鳴がすげぇ喜びながら
帰ってきたからな、なんとなく察した。」
『観察力半端ないな。まぁ成宮は自分のお気に入りが
取られなくて喜んでるみたいな感覚でしょ。
俺、先輩のこと好きなんだけどって言われて、
知ってる～って返しておいたもん。』
「...マジかよ....。」
『え、なに？』
「...いや、何でもねぇ。」
『成宮、大丈夫かなぁ。まだ部屋から出てきてないんでしょ？』
「時間はかかるんじゃねぇか。暴投した時、試合が終わった時の
アイツの顔、俺もまだ焼き付いてる。」
『たしかに、あんな表情初めて見たね。』
「けどこればっかは鳴が乗り越えないといけねぇ壁だ、
出てくるの待つしかねぇな。」
『だね。時間はかかるかもしれないけど、これで
潰れちゃうような男じゃないでしょ、成宮は。』
「随分鳴のこと買ってるんだな。」
『それは成宮のボール受けてる雅が一番分るでしょ？』
「生意気でムカつくけどな。」
『それは否定しない！』

二人でわいわいと成宮のことを話していて
きっと成宮は大丈夫、そう思っていた。

翌日---

新チーム始動の日、成宮は出てこなかった。

それは3日経っても続き、林田部長が引きずり出してこようかと
監督に言うも、闘志なき者はグラウンドには必要ない、
放っておけと言うだけだった。

だけど、1週間経っても成宮は部活に出てこなかった。