【QK】”好きです”についての考察【コラボ企画】

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「えー、っふふ、そうなの？でもさあ、」
「そう言う拳は？いまいるの？」

自分のことに触れられ続けるのが苦しくって、思わず質問を被せてしまった。ばか、聞くつもりなかったのに。

「彼女？いないよー」

その答えを聞いて、ほっとしてしまった自分がいて、嫌になる。いてもいなくても苦しいのは変わらないのに。


「……でも、好きなひとはいる」

「ふうん」


ぐしゃり。奪った人生を踏み倒す彼が見えた。

彼はわたしの反応なんか気にも留めずに、好きな人について語り始めた。

内容は頭に入ってこないけれど、幸せそうにキラキラした目で、まっすぐ夢を見つめているようだった。彼の明るい口調に反比例して、わたしの相槌は暗くなっていく。

わたしも好きな人……拳のことを誰かに話すとしたら、こんな顔ができるのだろうか。いいや、できるわけがない。もっと暗くて、重たくて、あっさり瞳に闇を映してしまいそうなのに。

彼の恋は明るくって、それが、苦しくって。苦しいと思ってしまうのが浅ましくて、嫌になっちゃって。

「あ、おつまみなくなっちゃったね」

話すだけ話してスッキリした彼は、テーブルに目を向けた。

「よっしゃ、コンビニ行こ」

立ち上がった拳が、わたしに手を伸ばしてくる。好きな子がいるくせに、わたしにも優しくて、それは幼馴染みとしてだとわかっていても、たまに期待を抱いてしまって。

彼の手を無視して立ち上がった。



……コンビニから出たわたしたちの手にはお目当てのおつまみと、肉まんが握られていた。ホットスナックを眺めていたら、どうしても食べたくなった。今年初の肉まん。コンビニこだわりの豚まん。

あったかいほかほかの豚まんを美味しそうに頬張る彼の横顔を見ていたら、

「好き」

つい、言葉が滑り落ちた。それも、一生伝えるつもりのなかった言葉が。心の奥底に閉じ込めたつもりの感情が。

「え？」

わたしの無意識の告白は、目を丸くした彼の耳にはっきり届いたんだと思う。


「……好きって、なんなんだろうね」


誤魔化し方なら、ほかにもあったと思う。でも、わたしの好きと彼の好きがあまりにも違いすぎるから。こんなにも違う想いを、わざわざ同じ名前で一括りにするのはどうかと考えてしまったんだ。

もしかしたら、拳ならば、あの福良拳ならば、納得のいく答えを見つけてくれるんじゃないかと一縷の望みをかけて。



どうしてか彼は、わたしの方を見てくれなかった。


どうしてか今日は、妙に月が輝いていた。

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