【wrwrd!】私とあなたのメルヒェン【短編集】 (ページ8)

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「A、大丈夫やから」

彼の言葉は何故こんなにも安心するのだろうか。私は少しだけならいいかなと思い、彼が差し出してくれた服を上から羽織る。

「お嬢ちゃんかわいいねぇ。ほら！これオマケだよ！」

始めての外出は特に何事もなく終わった。なんなら街の人にチヤホヤしてもらった。

『ありがとうございます』

笑顔で物を受けとる。そしてふと隣の路地を何の気なしに見た時だった。

『ぞ、ゾムさん！！』

「どうした？」

ゾムさんは買った食べ物を頬張りながら近づいてきた。

『あの子、死んじゃいそうなくらいに細い...』

路地にいる子は明らかにご飯を充分食べているとは言えないぐらいに痩せ衰え、虚ろな目には光が宿っていない。

「...今この国は発展はしているものの上の身分のやつだけしかそれを実感できてないんや」

ゾムさんは苦々しい顔をしながら淡々と言った。

『...それってどういう』

「下民には貴族や王族ほどの人権を与えられてないってこと」

『それってとっても卑怯じゃない！』

「でもそれが実際に起こっとる」

『そんな...』

それ以上言葉がでなかった。この国を率いているのは私の父親。私もその恩恵を受けていたのだ。直接ではないにせよ、間接的にこの悪循環の輪の中にいる自分が憎かった。

「A、帰ろう」

『...わかったわ』

渋々といった感じで頷く。宮殿の裏手に行き、ゾムさんに抱えられて部屋に戻った。

『ありがとう。楽しかったわ』

「...にしては表情は浮かばなさそうやけど？」

図星。私はさっき見た子供のことが忘れられなかった。

でも...

『いえ、ゾムさん本当にありがとう。これでやっとわかった』

「何が？」

『私は後継としてこの国のことを学ぶことを怠っていた。ゾムさんといることでそれを理解することができたの。これからは一国の王女になるために頑張るわ』

少しだけスッキリした気がした。逆にゾムさんはどこか拍子抜けしている様だった。

『それでね？たまにでいいの。たまにまたこうして遊びに来てくれる？』

「ええよ。何度でも来て、いっぱい話聞かせたる」

『本当に！？ありが...』

その時、腕を引っ張られた。不意をつかれた私はそのままゾムさんの方に倒れる。するとゾムさんは私の頬に手をおいて、軽くキスをした。

『！？』

「俺お前のこと好きなんよ」

声が出てこない。最近こういうことばかりだ。

「今度会ったとき返事聞かせてな」

彼はにやりと笑うと窓の外の砂の海の底に消えていった。