標的11 ページ23
「じゃあ、ここを……流」
「-2/3です」
「よし、正解。じゃあ、次＿＿」
転入後数日。
初日ははなんとも色々あったが、それ以外は何とか普通に過ごせている。自分に関しての記憶はまだ思い出せないが、生活や勉強するのに関しては何も問題ない。教科書をめくればほぼ理解できたし、マンションでの生活も思っていたよりすぐ慣れた。頭では覚えていなくても、感覚的にわかる、そんな感じだ。
初日のことだが、やはり沢田君の「おかえり」事件が一番印象深い。クラスでは一時期笑い話として流行ったが、不良っぽい子……なんとか寺君の一喝により収まった。沢田君と彼は大分違うタイプだが仲が良いらしい。野球部の山本君と合わせて3人でよく一緒にいるのを見る。
後日、沢田君本人から謝罪を受けた。自分と知り合いだったかを聞くと答えは否。では何故かというと、本人もよく分からないという。無意識のうち、らしい。オカルト。
そんなふうに思いを巡らせていれば、授業が終わってしまった。
「Aちゃん！お昼食べよ！」
「もう、京子、Aまだノートとってるでしょ」
授業中に書きそびれたまとめを書いていると私の机に2人が近付いてくる。笹川さんと黒川さん。
「あ、ごめんね」
「えっ…………あっえっと……もう、大丈夫…………終わったから……」
…………特筆しなかったが、私はコミュ障というやつである。例の風紀委員さんと会話したときは大丈夫だったのだが、何故か今はうまく言葉が紡げないのだ。
初日に沢山のクラスメイトに囲まれ、しかしどうしようも出来なくなってしまったときこの2人がフォローしてくれたのだ。
ルックスや性格から、この2人は皆に一目置かれているようだ。そんな彼女たちがこんな私に構ってくれる理由はわからないが、嬉しくそして何処か不安だった。
「そういえば午後は自習よね」
「……え、……そうだっけ…………」
黒川さんがふとそう口にする。笹川さんがニコニコして答えてくれる。
「そうだよ。うちのクラスの男子がプールそうじだから、女子は自習」
その言葉にそうか、と納得するがはたと一つ疑問をもつ。
「……水着…………あったっけ……」
続く (更新停止中)
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作者名：だいだい | 作成日時：2017年4月25日 0時
