目が覚めたら水の中でした 5【文豪ストレイドッグス】

243話 ページ46

あれから何時間此の場に滞在しただろうか



太宰さん曰く、結構度数の高いお酒を飲んでいたらしい


私はお酒に強いのか余り酔ってはいない



大宰さんはと云うと




「久々に酔ったなぁ〜」




結構酔っている様子だ


私と同じのを私と同じペースで飲んでいたからだろう



全身から気が抜けた様な喋り方で、目が若干トロンとしている




まぁ幸いな事に何処かの素敵帽子さんみたいに酒癖が悪いわけじゃないから楽だ



唯………




「虹色のゾウリムシ……」




何を云い出すのか判らないのが一寸難点だ



何だよ虹色のゾウリムシって


あっち側に逝ける茸でも食べたのか



だなんて若干呆れていた




「Aはさあ……」


「！……何ですか？」




急に私に話が振られたから吃驚した


当の本人はグラスの中にある球形の氷を指で突き乍ら此方に視線を向けずに喋り掛けている





「何か織田作に似てるよね……」


「織田さん、ですか………如何いう所がですか？」





何故急に織田さんが出たのかは判らないが、取り敢えず酔っ払いの話を聞こうと思った


てか、似ている節が全然と云って良い程見当たらない





「ほら言動とか。あの時の少年……憂君だっけ？其の時とか重なる部分が多々あったのだよ……」


「へぇー」





そりゃ何度も彼の人の言葉を借りたし


あの二十歳の糞餓鬼が近からず遠からず過去の太宰さんにほんの少しだけ似ている部分が有ったからだ

私と変な所が似てしまった



彼は私と一緒に居たから生と死の境目があやふやになっていた




生と死に関しては人類が


否、命あるもの達が一生かけて考える最大の問題だ




そんな彼にもせめて私のようには生きて欲しくなくて


此の最大の問題を考えさせたくて


多少真面な人間にしたあげくて


心の底から倖せになって欲しくて………




だからあんな結末になったんだ


此れが正しい判断かは時が経てばきっと判る





嗚呼

らしくない事を考えてしまった



太宰さんの話に集中しなければ





「他に似ている部分とか有るんですか？」


「有るよ、其れはもう沢山ね。酒が好きだとか
、煙草吸うとか、莫迦みたいに優しい所とか……」


「ふふっ、光栄です」





指を一本ずつ折り畳んで真剣に云ってくるものだから可愛くて口元が緩む



其れを見て何を思ったのか太宰さんは口を開いた





「………好きだよ、A……」


「……うふふ、素面の時にもう一度云って下さい」


「……ばぁか」

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