・ ページ10
・
ごめん大寿。借りてる100円返せないかも。
目の前にはそり立つ壁、ではなくヤクザ(推定)の皆さん。そして一人だけ異質な雰囲気を放つ白髪の少年。これだけで威圧感がハンパじゃない。別にヤクザ相手に何かしでかした訳ではないけれど、私は今夜東京湾に沈んでいるかもしれないので、とりあえず現在どこぞのオーナーをやっている弟に心の中で謝っておく。
でもヤクザが一体コンビニへ何を買いに？という疑問はすぐに消え去ることになる。そう、ヤクザと言えどお客様。当然コンビニにある商品を買いに来たに決まっている。
そうしてレジ台に置かれた一つのたい焼き。たい焼き一つを買うために私を囲むヤクザたち。なにこれ。
不意に顔を上げた少年と目が合った。そして気づく。
「？……おねーさん、お会計」
『あ、はい。お会計○○円になります……』
すっげぇ隈だった。隈オブザイヤー受賞おめでとうございます。ついでに私より顔に生気が篭ってない。今の子も苦労してんだな。
歴代隈すご人間第一位の九井さんを押しのけて殿堂入りしたこの少年に嬉しくないであろう拍手を心の中で送る。
少年の隣にいたガタイの良いヤクザさんが財布を出して会計を済ませ、レシートを少し雑に受け取り、これで終わりかと思いきや、先程からこちらを見つめている少年がなかなかレジから離れない。
冷や汗が背中を伝う。何かしただろうか私。
「……顔」
『顔？』
さっき廃棄の蕎麦食べた時のネギ、顔に付いてたか？
焦って口周りをペタペタ触ってみるが、特にネギの感触はない。少年はそんな様子を見てかフッと笑い、顔を左右に揺らした。
「治って良かったね」
『……ありがとう、ございます……？』
それだけ言って去ろうとする少年、ふとそこで誰かと面影が重なって、呼び止めてしまった。
『あのすいません、これ……よかったらどうぞ』
新発売のどら焼き。あとで並べようと思ってバックヤードに置いていたのだ。だが渡そうとした瞬間、周りの男たちが私に向かって構えだす。
……親切心で渡そうとしただけなんだけどなぁ……
死の覚悟が出来た所で大人しくしていると、少年が片手で男たちを制した。サンダル特有のペタペタとした足音が近づいてきて手の中のどら焼きが無くなる。
「……ありがと」
また来るね。
少年とヤクザたちが去っていく。誰もいなくなった店内で思わずしゃがみこんだ。
『……ヤクザこわ……』
頭の中のピンクゴールドの少年がケラケラ笑っている。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 598人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
むーこ - またお返事が貰えるとは…！嬉しいですっっ！！ありがとうございます…！更新来てるの見るだけでテンションめっちゃ上がりました！これからもずっと応援してます！ (4月8日 13時) (
レス) id: 6b7afb9598 (このIDを非表示/違反報告)
惰眠の雑食(プロフ) - むーこさん» コメントありがとうございます！最近かなり更新頻度が減ってきていますが、こんな小説でも支えになれるということを聞けて嬉しいのでやる気出して書いていこうと思います！これからも応援よろしくお願いします👍 (3月30日 17時) (レス) id: 3cf3b068e7 (このIDを非表示/違反報告)
むーこ - 返信も嬉しかったです〜！ (3月24日 21時) (レス) id: 6b7afb9598 (このIDを非表示/違反報告)
むーこ - この小説、元気なくなった時に読むとすごく笑顔になれます！日常の支えです！素敵なお話の更新気長に待ってます！主様ありがとうございます！！ (3月24日 21時) (レス) id: 6b7afb9598 (このIDを非表示/違反報告)
メイデーア - 回答ありがとうございます！イザナらしいですね！これからも更新頑張ってください！ (3月4日 21時) (レス) @page49 id: 8fc649d94d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：惰眠の雑食 | 作成日時：2023年3月27日 0時
