32 . 笑う門には死神来る ページ48
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『蕎麦おいしいね、シオちゃん』
「なぁ」
『あ、薬味足す?ネギもあるし大根おろしもあるよ』
「なぁオイ」
『ビール追加しよっか』
「人の話聞け!!!!!」
こっちに向かって身を乗り出してくるシオちゃん。机が揺れる勢いで蕎麦が零れないよう持ち上げ啜っていると、彼はため息と共にゲンナリした様子で左方向を指さした。指す先にはソファに横たわる長身のクソ野郎。
「アレなんとかしねェと、オレらが豚箱入りだぜ」
そう言い切って座り直すシオちゃんの顔には明らかな焦りと不安が見える。もちろん私もこのままあのクソ野郎を家に置くつもりはさらさら無い、が。
『……起きたら追い出すよ』
「警察は」
『警察……も、呼ぶよ……?』
「何でさっきからちょっと挙動不審なんだよ」
不満そうにジト目で睨まれる。普通は警察にすぐ突き出すのが最適解だ、そんなの分かってる。けど、呼べない理由がこちらにもあった。
思い出すのは九井さんの言葉。
【なにかあっても警察は呼ぶな。オレか竜胆呼べ。
このマンションは_____……】
九井さんの管轄 、つまり反社の手が及んでる所だ。そんなのシオちゃんには説明できない。まぁ彼のスミも結構それっぽく見えるんだけどカタギだし、私もカタギだし。なんでただの一般人が反社が管理してる土地に住んでんだろ。それはともかく、事情があり警察は呼べない。
『警察は関与させない。面倒だから』
最後のつゆまで飲み干して丼茶碗を机に置く。シオちゃんは納得いかなさそうな目でこちらを見たかと思えば、途端に悲しそうな目をした。
「……許したくねェ。コイツとあのチビは」
___を殺した。
頭を鈍器で殴られたような錯覚を覚える。
アイツが殺人の共犯なのは知っていたけど、被害者がまさかシオちゃんの大事な人だなんて思いもしなかった。
思わず額を手で押さえる。これは早いところ交番に突き出した方がいいのではという考えが浮かぶけれど……
「なぁ、面倒だっつったけどよ。なんか別に理由あんだろ?……ここの家主はお前だし、オレも、もう昔のことだからとやかく言わねェ」
頭を横に振ったシオちゃんは先程の目とは打って変わって、受け入れる覚悟ができた目をしていた。
『ごめんね、でもありがとう。嫌かもしれないけど、あくまでコイツが起きるまでだからさ』
呑気に寝そべるクソ野郎の頭を叩けば、小さな唸り声が聞こえる。
柴 A、一日限定で犯罪者と暮らします。
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むーこ - またお返事が貰えるとは…!嬉しいですっっ!!ありがとうございます…!更新来てるの見るだけでテンションめっちゃ上がりました!これからもずっと応援してます! (4月8日 13時) (レス) id: 6b7afb9598 (このIDを非表示/違反報告)
惰眠の雑食(プロフ) - むーこさん» コメントありがとうございます!最近かなり更新頻度が減ってきていますが、こんな小説でも支えになれるということを聞けて嬉しいのでやる気出して書いていこうと思います!これからも応援よろしくお願いします👍 (3月30日 17時) (レス) id: 3cf3b068e7 (このIDを非表示/違反報告)
むーこ - 返信も嬉しかったです〜! (3月24日 21時) (レス) id: 6b7afb9598 (このIDを非表示/違反報告)
むーこ - この小説、元気なくなった時に読むとすごく笑顔になれます!日常の支えです!素敵なお話の更新気長に待ってます!主様ありがとうございます!! (3月24日 21時) (レス) id: 6b7afb9598 (このIDを非表示/違反報告)
メイデーア - 回答ありがとうございます!イザナらしいですね!これからも更新頑張ってください! (3月4日 21時) (レス) @page49 id: 8fc649d94d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:惰眠の雑食 | 作成日時:2023年3月27日 0時