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広いオフィスの中、ランチタイムを楽しむ人たちの喧騒を潜り抜ける。大勢いる社員の皆さんの中で一際存在感を放っている存在に近づき、肩を叩いた。
『お疲れオーナー。差し入れ持ってきたよ』
「……なんでここに居やがる」
『メール見てないの?』
「そういうこと言ってんじゃねぇ。受付どうやって通ってきた」
『受付……?』
頭に疑問符を浮かべていればバカデカいため息を吐かれてしまった。ちょっと傷つく。
遠慮なく隣の席に座り、この会社の社長であり様々な飲食店のオーナーも務めている双子の弟、大寿の顔を見つめる。眉間の皺がすごい。
『無理はしてないみたいだね。八戒たちも元気そうだったよ。たまには会ってくれば?』
「フン、生憎こっちは忙しいんでな。時間がねぇ」
『隆くんには会ってるのに?』
睨みつけてくる視線を感じながら話を続ける。もちろん大寿にも同居人が出来たことや最近の話題なんかも話したりするが、大体返事はない。
『隆くんと言えば、さっきちょっと怒らせちゃったみたいなんだよね』
「三ツ谷が怒る……お前にか?」
『うん。なんて言ってたっけな』
去り際に言われた一言を思い出そうとしていると、後ろからバタバタと慌ただしい足音が数人分聞こえてきた。
「困りますよ貴方!勝手に会社に入られては……って柴社長?お知り合いですか?」
「悪いな。今帰らせる」
席を立つ大寿に続いて立ち上がる。心做しか周りが静かになった気がするけど、やっぱり社長オーラってすごいんだなぁ。
廊下を進み、エレベーターのボタンを押すと、誰も利用していなかったのか思ったより早くエレベーターがやってきた。二人揃って中に入り扉を閉める。無機質な機械音声の案内のもと1階までたどり着き、エントランス出口で大寿が立ち止まった。
「で、三ツ谷が?」
『ん?えーと……
"あんまり、焼かせないでくださいよ"って』
一瞬大寿が目を丸くし、クソデカため息と共に整えられた頭をガシガシと掻く。あーもったいない、綺麗なセットが崩れてしまう。
「なんて返したんだ」
『いつも八戒の世話焼かせてごめんねって言ったよ』
『すごい微妙な顔されちゃった』と付け加えれば、堪えきれないと言わんばかりに大寿が小さく吹き出した。
どうしたのかと疑問に思う間もなく背中を押される。振り返れば大寿は背を向けて歩き出していたから、名残惜しさを感じながらも同じように歩き出した。
『よいお年を。大寿』
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むーこ - またお返事が貰えるとは…!嬉しいですっっ!!ありがとうございます…!更新来てるの見るだけでテンションめっちゃ上がりました!これからもずっと応援してます! (4月8日 13時) (レス) id: 6b7afb9598 (このIDを非表示/違反報告)
惰眠の雑食(プロフ) - むーこさん» コメントありがとうございます!最近かなり更新頻度が減ってきていますが、こんな小説でも支えになれるということを聞けて嬉しいのでやる気出して書いていこうと思います!これからも応援よろしくお願いします👍 (3月30日 17時) (レス) id: 3cf3b068e7 (このIDを非表示/違反報告)
むーこ - 返信も嬉しかったです〜! (3月24日 21時) (レス) id: 6b7afb9598 (このIDを非表示/違反報告)
むーこ - この小説、元気なくなった時に読むとすごく笑顔になれます!日常の支えです!素敵なお話の更新気長に待ってます!主様ありがとうございます!! (3月24日 21時) (レス) id: 6b7afb9598 (このIDを非表示/違反報告)
メイデーア - 回答ありがとうございます!イザナらしいですね!これからも更新頑張ってください! (3月4日 21時) (レス) @page49 id: 8fc649d94d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:惰眠の雑食 | 作成日時:2023年3月27日 0時