四話目。 ページ47
途端、頭の中でちりん、と玲瓏な音を奏でて落ちたビヰ玉の音が響く。美しく光を取り込む玉は、思えば此処の飴にも似ていた。
然して何依り──彼女の瞳に似ていた。
口角が自然と上がる。
私を見て悪戯に笑った彼女が口許を隠した手の薬指には自然光を反射して煌めく銀の指輪。
然うか、既婚者の余裕か。
負けだ、と手を挙げると、愉しそうに笑った後彼女は私に幾つかの質問をした。
個人情報に過干渉し過ぎない程度に、Aの事を。
私も答えた。
然うして選んだ糖菓は、三つの透き通った──Aの瞳の瑠璃色と、私の紺色、其れから愛の様な紅色の飴玉。
屹度、彼女は喜んで呉れる。
然うしたら、又来よう。
今度は二人で。
御会計と御礼の言葉を述べ、小さな包みを入れた紙袋を片手に、口笛でも唄いそうな程の陽気さで社へと足を向けた。
♡☆*:♡☆*:
「たッだいまあ!」
「貴様……太宰ィィィイイイイ!」
扉を開いた瞬間、飛び付いて来た国木田君。
いやあ、今日も脳が揺れるよ。
国木田君は仕事の鬼だねェ。
と、脳内で苦言を呈し、「うふふふ」と不気味に笑って誤魔化す。
「今日は赦して呉れ給えよ。あ、国木田君もホワイトデイの猪口冷糖欲しい?」
「要らんわ、ど阿呆」
解放された(正しくは突き放された)首を擦り乍ら社内を見廻すと、其処には御目当ての人物が。
紙袋から小さな包みを取り出して片手に乗せ、軽快な足取りでAの背後に気配を消して立つ。
然して──。
「うわあッ……何て云うとでも?」
「矢ッ張り判って仕舞うかあ」
「何年
彼女の性格上、器用に片膝を折り踵で私の脛を蹴って来る事を見越し、私も膝を前に突き出した状態で一歩下がる。
疎ましそうに振り返ったAに、左の掌を向けて潔白の意を表明する。尚も薄目で睨む彼女に、ムードも減ったくれも無いが、右手で包みの上を掴んで衣囊から取り出して見せる。交換条件、つまり、赦して欲しい代わりに此の包みを差し上げます、と云う事だ。
尤も、元来彼女にあげる心算だったから、彼女が交渉成立の証として手を出す前に、彼女の手を取って其れを乗せる。
「何、此れ」
「ホワイトデイの御返し、かな」
「嗚呼。彼れね……」
目を伏せて判るか判らないか位の笑みを堪えてから、私の目を見据えて「開けて良い?」と云う問いに頷く。
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りく(プロフ) - 物部さん» き、期待していただけるなんて光栄です!!スランプにがっつりハマっていますが、頑張って更新します! (2016年11月28日 21時) (レス) id: ac95837323 (このIDを非表示/違反報告)
物部(プロフ) - 続き期待しています。更新頑張って下さい! (2016年11月21日 22時) (レス) id: fcc84377d6 (このIDを非表示/違反報告)
りく(プロフ) - つららっちょさん» んおおおお!そんな、そんな!嬉しいです!!ご期待に添えるよう頑張ります!!コメント有難うございます!! (2016年9月3日 21時) (レス) id: ac95837323 (このIDを非表示/違反報告)
つららっちょ(プロフ) - 夢主ちゃん幸せになってて良かった……!更新される度に心が踊ってました笑これからも楽しみです。応援しています! (2016年9月3日 21時) (レス) id: 134dceea58 (このIDを非表示/違反報告)
りく(プロフ) - あさぎり*さん» 最初から!頑張って更新します!!コメント有難う御座いました!! (2016年9月1日 7時) (レス) id: ac95837323 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りく | 作成日時:2016年8月20日 18時