生存三十三日目。 ページ36
「何が可笑しいのです?」
「其の内判るわ」
然し即答したAが、闘いから意識が逸れて居る裕慈の腹を、思い切り蹴り飛ばした事で、もろに喰らった彼は壁に叩き付けられる。喉から絞り出された呻きと共に、片膝を着いた裕慈は、先程迄とは違う険呑な光を瞳に堪えAへ視線を戻した。
Aは、漸く崩れた裕慈の表情に、妖艶とも取れる瞳で満足そうに微笑を漏らす。
終わらせる──。
裕慈は、止め用に取って置いた木片が、衝撃で割れていない事を確認すると、素早くAの足下に投げ、其の隙に固まった我楽多の山へ疾走する。
対して、猫の如くするりと横に逸れて躱した彼女は、次の攻撃を予測しつつ油断無く、視線を外さない。
裕慈は我楽多を一つ掴むと上へ放り、重力に従う物体を彼は左足の脛で蹴飛ばす。投げる依り数倍強い威力と疾さの壊れ掛けた其れは、Aに向かって一直線に空気を裂いて飛ぶ。
其れを鏡に映したAは、裕慈の顔に我楽多の方向を変えさせる。
すると、裕慈は両手で近くの木箱を持ち、飛んで来た其れを打つけた。爆破でほぼ半分に成った木箱を裕慈はAとの中間地点に投げ付ける。
大質量の木箱は中規模の爆発を起こし、辺りが煙に紛れる。
不鮮明な視界の中、胸の前で両手を交差させて辺りを見廻すが、一面の煙景色に、Aの視界には砂埃しか映らない。
煙の消え掛かる中、気配と煙の流れ丈でAを見付けた裕慈は、彼女の項に蹴りを入れ意識を飛ばしに掛かるも、其れ察したAが反射で、交差した腕を使い防御する。其の際、Aの鏡は弾き飛ばされ、五米先で地面で鏡面が綺麗に割れる。
最大の好機と見た裕慈は、蹴り飛ばした足を軸にしてAの腹に狙いを定め脚を素早く伸ばす。
然し、Aは裕慈の足蹴を左腕で止め、其の足を掴み放ると、地面を蹴って駆け、御構い無しに体制を崩した裕慈の鳩尾に右拳をめり込ませる。
強い衝撃と痛みで、裕慈の体は抵抗無く後方に吹っ飛ばされた。幸か不幸か、其の直ぐ先には壁。
裕慈が壁に引き寄せられる速度と同じに、Aは割れた鏡の元へ駆け、破片全ての鏡面にすばやく触る。
裕慈の背が壁に打ち付けられたと同時、Aは挙手し、振り下ろす。
がががッ、と裕慈の服と壁を縫い付けて突き刺さる破片。次いで眉間の寸でで止まる破片。少しでも動けば、裕慈の眉間に刺さるだろう。
「残念ね。私は【映した物を操れる】のよ」
裕慈は「完敗ですね」と呟いて、力無く頭を垂れた。
61人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りく(プロフ) - 物部さん» き、期待していただけるなんて光栄です!!スランプにがっつりハマっていますが、頑張って更新します! (2016年11月28日 21時) (レス) id: ac95837323 (このIDを非表示/違反報告)
物部(プロフ) - 続き期待しています。更新頑張って下さい! (2016年11月21日 22時) (レス) id: fcc84377d6 (このIDを非表示/違反報告)
りく(プロフ) - つららっちょさん» んおおおお!そんな、そんな!嬉しいです!!ご期待に添えるよう頑張ります!!コメント有難うございます!! (2016年9月3日 21時) (レス) id: ac95837323 (このIDを非表示/違反報告)
つららっちょ(プロフ) - 夢主ちゃん幸せになってて良かった……!更新される度に心が踊ってました笑これからも楽しみです。応援しています! (2016年9月3日 21時) (レス) id: 134dceea58 (このIDを非表示/違反報告)
りく(プロフ) - あさぎり*さん» 最初から!頑張って更新します!!コメント有難う御座いました!! (2016年9月1日 7時) (レス) id: ac95837323 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:りく | 作成日時:2016年8月20日 18時