生存二十八日目。 ページ29
太宰が加わり、均衡した状況で交戦し続けるA、太宰、敦、雅毅、慈裕の五人。
Aが慈裕を攻撃すれば、其の途中で雅毅が横から蹴りを入れる。其の動きを敦が封じ、太宰が攻撃しようとするも、慈裕が彼女の元を離れて攻撃に向かう。其れをAが封じる。
───其の繰り返し。
最初は面白そうに遣り取りを眺めて居た裕慈だったが、次第に飽きて来たのか、仲間に入れて貰えなかった園児の如く眉を顰め、頬を膨らまし拗ね始める。
とうとう痺れを切らした裕慈は、我慢成らず走り出す。
目指すは勿論──
「女の子は俺のだってば!!」
──A一人。
彼等の闘いの輪から弾き出す様に、Aの腹を容赦無く蹴り飛ばす。
「ぐッ…」
人影で攻撃を察知出来なかったAは、其の先の壁に叩き付けれ、周りの壁がぱらぱらと崩れる。
「Aッ!!」
「待つんだ敦君!!」
蹴り飛ばされたAの元へと駆けようとする敦の肩を抑え、彼の動きを制する太宰。すると敦は、突然抑えられた事に依り、足が宙を蹴って見事に尻餅を着いた。
仰天して太宰を振り返ると、太宰は意地の悪そうな顔で敦の瞳を見詰めて居た。
「観て居給え敦君。彼れが彼女と、彼女の異能だ」
「彼女…?」
太宰は其の問いには答えず、肩に置いた手を退け乍ら答える代わりに、ニヤリと笑った。
然して、尻餅を着いた敦に手を差し伸べ立たせ乍ら、裕慈の方を見た。加えて、小さな怒りを込めた目で、呟く。
「…─────なのに」
「今、なん…」
何て、と問おうとした敦を遮るかの如く、Aの飛ばされた方向から、小石の転がり落ちるかんからん、と云う音が割入る。
敦が振り向くと、其処には片膝を付いたAが、虎視眈々と裕慈を見据えて居た。
「誰が『俺の』よ。随分と手荒ね」
音を出した張本人は、悠々と立ち上がり、苦言を呈し乍らも表情は何処か好戦的で、唇を薄く引いて笑って居る。
然し、彼女の口端からは一筋の赤が滴り、壁の片と思しき微粒が星の様に肩や髪に散って居て、無傷で無い事を明確に提示する。
其れでもAは、挑発的な笑みで裕慈を見据える。──其れは其れは愉しそうに。
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りく(プロフ) - 物部さん» き、期待していただけるなんて光栄です!!スランプにがっつりハマっていますが、頑張って更新します! (2016年11月28日 21時) (レス) id: ac95837323 (このIDを非表示/違反報告)
物部(プロフ) - 続き期待しています。更新頑張って下さい! (2016年11月21日 22時) (レス) id: fcc84377d6 (このIDを非表示/違反報告)
りく(プロフ) - つららっちょさん» んおおおお!そんな、そんな!嬉しいです!!ご期待に添えるよう頑張ります!!コメント有難うございます!! (2016年9月3日 21時) (レス) id: ac95837323 (このIDを非表示/違反報告)
つららっちょ(プロフ) - 夢主ちゃん幸せになってて良かった……!更新される度に心が踊ってました笑これからも楽しみです。応援しています! (2016年9月3日 21時) (レス) id: 134dceea58 (このIDを非表示/違反報告)
りく(プロフ) - あさぎり*さん» 最初から!頑張って更新します!!コメント有難う御座いました!! (2016年9月1日 7時) (レス) id: ac95837323 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りく | 作成日時:2016年8月20日 18時