不憫な後輩について (ページ5)

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5、本気か冗談かページ5

廊下の壁に凭れて腕を組んでいた降谷が軽いため息をついた。
急に私へ近づいたかと思えば、グイッと腕を引かれ無理やりに立たされる。…ひどい。

｢ま！待て…おい、降谷！私はまだ仕事の続きを…｣
｢騒がしい人ですね。一体何時だと思ってるんです？｣

私の腕を引きながら歩き続ける彼の表情は見えない。

｢2時15分……って、どうせ私達以外に人なんかいないだろうが！｣

そう言い切った所で、丁度仮眠室に着いてしまった。
強引に部屋の中へと押し込まれる。

｢はい。…さっさと寝て下さい｣

有無を言わせぬ態度。背の高い彼は、私を見下ろしながら淡々と告げた。
…だが。
寝ている暇があれば、降谷の仕事を少しでも片付けてやりたい。

｢…悪いが、私は眠くないから。｣

ー戻る。

そう言って仮眠室から出ようとドアノブに手を伸ばした所で、肩を掴まれ

気がつけば、身体が彼の方を向いていた。
そのまま音を立てて背中をドアに叩きつけられ、軽く噎せた。

｢っ、…けほっ、…おい、何する…｣
｢貴女らしくないですね｣

｢…｣

彼の両腕に閉じ込められて、鋭い瞳で真っ直ぐに見つめられる。
いつも可愛いと思っていた降谷を、この時初めて " 怖い " と思った。

｢どう、いう…｣
｢普段の貴女なら、僕に肩を掴まれる前に避けるはずだ。…違いますか？｣

｢降谷…｣

はぁ、とため息をついて下を向く。
確かに…まともに眠れていないせいで、酷く気が抜けている。

｢化粧で隠しても分かりますよ、隈。｣
｢……女にそんなこと言うんじゃない…｣

目元に手を当てて軽い舌打ちをした。もちろん、不甲斐ない自分に対して自然に出たもの…

｢私…今は潜入捜査もしてないし、降谷ほど危険な仕事もない。徹夜が続いた所で何も問題ないから…早く退いてくれ。あぁ、それと…お前の仕事は終わらせておくから…いい加減家に帰って…｣

｢その口、塞ぎましょうか？｣
｢…は？｣

ナニで？なんて聞く暇もなく、グイッと顎を持ち上げられて絡む視線。

降谷の青い瞳はやはり、いつもより鋭く見えて…息が詰まる。

｢…っ、｣

そっと彼の親指が、私の唇をなぞった所で顔が真っ赤に染まった。
こ、こいつ何して…

｢やっと黙った｣

ニヤリと笑った降谷は、私から離れると手首を引いてベッドに座らせる。

｢早く寝て｣
｢いや、だから…｣

｢キス、されたいんですか？｣
｢は、はー？！おま…なに、いって！？｣
｢嫌なら早く横になる。｣

｢ハィ！｣

｢全く。…おやすみなさい｣