素直な君との攻防戦2【降谷零】

44、恋に気がついた日 ページ2

｢降谷、コーヒー飲みたい｣


" パツキン首席くん " から " 童顔 " 。 " パツキン " を経て(たまにゴリラもあった)

呼び名が『降谷』になるまで、さらに１ヶ月。


初めて名字で呼ばれた時、柄にもなく鼓動が早まったことを覚えてる…って、名前で呼ばれた訳でもないのに。
我ながら小学生より酷い。



そして、こいつと関わるようになってから自分についての発見もあった。


｢コーヒー…？またコンビニに付き合えって？｣
｢Yes！｣

僕の部屋の前で財布を持つAは、やたらキラキラした顔で。
仲良くなってからというもの、夜にコーヒーが飲みたくなると僕の部屋を訪れ、頻繁に外へ誘うようになっていた彼女。


…僕も、この外出が割と好きだったが。心とは裏腹に、勝手にため息が漏れる。


｢毎日コーヒーばかりだな。カフェイン中毒者｣
｢カフェイン中毒者って呼ぶな｣

｢お前は本当に可愛くない｣
｢うるせー！！｣
｢騒いでると置いてくぞ。バカ｣
｢待って！ゴリラ｣
｢誰がゴリラだ｣


自分について分かったこと。

Aに対しては、意に反してトゲトゲした態度を取ってしまうらしい。

…だから小学生男子か、僕は！


優しくしようと思ってはいても、どうしてもダメで。
それは結局、警察学校を卒業して現在に至るまで変わらなかった。


松田にからかわれるのも仕方ない。









明確に自分の恋心に気がついた日は、僕の呼び名が『降谷』になって数日後。


一度寮に戻ったものの、机に教科書を忘れた僕は校舎に戻り、日が落ちて茜色に染まる廊下を歩いていた。

教室に入る直前、中から聞こえたのは女子の怒鳴り声。
…喧嘩か？と気配を消して後方のドアから様子を見る。


｢…っ｣

そこにいたのは、数人の女子に囲まれるA。
彼女は胸ぐらを掴まれていて。


喧嘩の原因は分からない。Aが一方的に彼女達を怒らせた可能性だってある…

だからこそ、他人の喧嘩に割り込むべきではないとわかっている、のに。


" 彼女が胸ぐらを掴まれている " その事実だけが、僕の頭を埋めつくす。
止めなければ、と。勝手に足が動いた…はずだった。

だが結局、僕はその場から動けずに固まることになる。



だって…


｢何であんたが萩原くん達と仲良くなってんのよ！｣

あぁ、分かった。


あの女子達。
教場は違うが、Aと初めて話した日の合コンにいた奴らだ。

でも…彼女は『人数合わせで連れてこられた』と言っていたから、てっきり友人だと思っていたが。

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