33、知らないフリ ページ33
「あ、むろさん…?」
「…ごめん」
夜にならなければ。
ポアロで、会わなければ。
……僕が、彼女の部屋のチャイムを押さなければ。
彼女の顔を見ることも、触れることも、声を聞くことも出来ない。
連絡を取ったことなんて、たったの1度もない。
そもそも電話番号だって、知らない。
…いや。今の僕は。
知ろうとも、思えない。
僕が本気で好きだと思っている " 絢瀬A " は。
近いようで、こんなにも。
…遠い存在だ。
「…コナン君。」
「…」
『…君なら、分かるだろ?』
僕が好意を伝えられない、理由。
自嘲気味に、ほんの少しだけ笑って…静かに問えば。
コナン君はすぐにピクリと肩を揺らして、悲しそうに眉を下げた。
今の僕が、一般人と付き合う事が……
" A " にとって、どれほど危険で辛いことか。
本当の僕を知ってもらうことも、まだ。できなくて。
そして…僕は、いつ死んだっておかしくない、人間だから。
例えば。
好意を伝えて。恋人になって。Aの心を、縛り付ける。
なんて……そんな、無責任な事。
今は…出来る訳、ない。
" あの組織 " に詳しい君なら…よく、分かるはずだろ?
暫く、言葉を詰まらせて黙っていた彼が、漸く。小さな声で僕を呼んだ。
「ん?」
「…その……お姉さんとは、どういう知り合い…」
「あむぴー!来たよ!」
コナン君が、Aの事を聞こうとした直後。
ドアが勢いよく開いて、学校帰りの女子高生が来店した。
『コナン君、ごめん。話はもう終わり。』
そう微笑みかけて。
僕はすぐに、" 安室透 " の笑顔を貼り付けて出迎えた。
「あれ?この子のパフェ、いつもと違う?…もしかして新メニュー?あむぴ、私も食べたい!」
「あぁ、いえ。すみません、丁度材料があったんで、試しに作っただけなんです。ポアロのメニューではないので…」
「私には作ってくれないの?」
「すみません。」
「えー?!残念…」
「いつもより、フルーツを多くしておくので…それで許してくれますか?」
「うん!ありがとう、あむぴ!」
コナン君。
君に…僕のこんな情けない姿を見せて、ごめんね。
自分でも、矛盾してるって。ずっと前から分かってるんだ。
僕とAの関係を変えるのは……もう少し、先の話。
だから。
今はまだ、何も知らないフリをしていて。
ー続編へ。
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真実(プロフ) - reさん» どの小説も読みやすかったです。一目惚れのお話は読んでいてこんな一目惚れの仕方もあるのかと感心しました!リクエストの件、ご無理はなさらずに形に出来そうであればお願いします!! (2021年8月6日 13時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - 真実さん» ぇええ?!全部読んで下さったのですか…?!(;-;)貴重なお時間を私の小説に割いて頂いて…う、嬉しすぎます…!本当に幸せです、ありがとうございます(;-;)一目惚れのお話も読んで頂けて幸せです…!リクエストのお話もいずれ形にできるよう、頑張りますね!^^ (2021年8月6日 7時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - reさん» 読んでいてお互いの気持ちを考えているのが分かるのでキュン死するかと思っています(因みにreさんの小説は全部読破しております/リクエストした際に言っていた降谷さんの一目惚れの小説も読みました) (2021年8月5日 21時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - 真実さん» 真実さん、コメントありがとうございます…!2人の、お互いを大切に想う気持ちを伝えられているのなら、私はとても幸せです…(;-;)とても嬉しいお言葉、いつもありがとうございます…!2人の幸せのために、続編も引き続き頑張りますね!^^ (2021年8月5日 19時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - 夢主には夢主の苦悩、降谷さんには降谷さんの苦悩と言うものがreさんの小説から痛いほど伝わってきますね。けど、それはお互いを大切に思っての事だと思うと切ない気持ちになります。続編も楽しみにしてます!! (2021年8月5日 13時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:re | 作成日時:2021年7月25日 15時