君を振り回したい僕【降谷零】

32、僕のものじゃない ページ32

｢" デート " って言ってたけど…本当？｣

コナン君は結局、Aについて詮索したくなったようだ。
ストローをクルクルと弄びながら問いかけてくるから、僕は小さく笑って頷いた。


｢本当だよ。付き合ってはいないけどね｣

｢え？そうなの？｣
｢うん。この前のデートも、僕が無理に誘ったんだ｣


あの日の朝。
迎えに行った時のAの顔を思い出すと、今でも申し訳なくなる。
途中でコナン君達に会いはしたけれど、結果的に…すごく楽しんでくれたようで、安堵した。


……あぁ、いや。

帰宅した時は、気持ちが現実に戻ったからか、少し怒っていたな。

自分の部屋に帰ろうとするAを、僕の部屋に引き摺って。
彼女の好きな料理を作って、散々甘やかしたら、一瞬で機嫌は直ったけれど。

…本当、チョロくて心配になる。



｢お姉さんのこと、好きなの？｣

｢ん？勿論。｣


笑顔で頷けば、コナン君は『そっか』なんて呟いた。


｢あぁ、でも……彼女には、絶対に内緒にしてくれるかい？｣

｢え？デートするくらいだから、安室さんの気持ち、本人も知ってるんじゃ…｣

｢うーん、それはどうだろう｣

首を傾げて、苦笑する。

彼女に『好き』だと言われない、とか。まだ言われたくない、とか。…それ以前に。

僕は、Aの気持ちが本当に分からない…から。


｢…どうして伝えないの？安室さん、『無理に誘った』とは言ってたけど…お姉さん自身が本当に嫌がってるなら、デートなんて断るでしょ？だったら…｣



｢コナン君｣

彼の問いかけを遮るように、思わず名前を呼んだ。



お願いだ。

……それ以上は、言わないでくれ。


自分の矛盾した行動に、心底嫌気がさすから。



最近、Aの事ばかり頭を埋め尽くす。


僕の助手席に座るのに、随分慣れた。
一緒に帰った日は料理をして、ふたりで食べる。
僕の布団に身体を沈めて。Aに触れることを、許されて。


寝顔だって、見られる。僕の腕の中にはAがいて……強引にキスをしても咎められない。

僕の部屋には、ほんの少しだけ。…彼女の物が、置かれるようになった。




それ程まで、僕の近くにいる筈の…Aは。

今すぐにでも手に入れたい。
Aは。



どうしたって

僕のものじゃ、ないんだ。

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