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24、傍にいて ページ24

「Aさん?」
「……んぅ、」

僕の布団の上で、今にも眠りに落ちそうなA。
このまま彼女の部屋に帰すのも、なんとなく気が引けて……

いや、まぁ…どうせ隣なんだが。


「僕の服、貸してあげるから…シャワー浴びておいで?」

「…」
「Aさん?」

薄暗い寝室の中で、彼女の頬をそっと撫でる。眠たそうな瞳で僕をじっと見つめた彼女は、『…あむぴ』と小さな声で僕を呼んだ。

「ん?……明日、仕事でしょう?何時に起きるんですか?」
「…おしごと……やだ」

「子供みたいな事言わないで下さい」


『職場まで送ってあげるから。…ね?』

髪を撫でながらそう告げれば、Aはこくりと小さく頷く。


「シーツ、取り替えておきますから。……立てる?」

手を貸そうかと思ったら、自分で身体を起こした彼女は
もう一度『あむぴ…』と呟いて、僕を真っ直ぐに見つめた。


「ん?」
「…私のこと、追い出さない、の?」

「行為が終わったら追い出す…って……僕を何だと思ってるんですか。いいから、シャワー浴びておいで?」

Tシャツとタオルを渡して、ぽんぽんと頭を撫でる。
『ありがと…』と呟いたAは、相変わらず眠たそうな…ふらふらとした足取りで浴室へと向かった。


「……はぁ」

シャワーの音が聞こえて、僕は小さなため息を零した。


Aは、何も言わなかった。
その事実にひどく安堵している自分に。


…幻滅する。


彼女を危険に巻き込みたくない、なんて綺麗事を言って。……結局は全部。

自分の保身のためだ。


関係は変えないまま、Aを抱いて。『好き』を言わない彼女に安堵して。

自分に都合のいいことばかり考えて……

「…ごめん。」

電気をつけた寝室で、ひとりシーツを取り替えて。無造作に散らばった服を集めた。







「…あむぴ」
「はい。…あぁ、目が覚めました?」

名前を呼ばれて、笑顔で彼女へと近づく。

シャワーを浴びたおかげで、少し目が覚めたらしいAからタオルを取り上げて、優しく髪を拭いていく。


「ん…ありがとう」

「家に帰る?」
「…」

素直に髪を拭かれている彼女が、黙ったまま僕のTシャツの裾を掴んだ。

「Aさん?」
「私…」

「ん?」
「ここにいたい、って言ったら、やっぱり…迷惑…?」

小さな声で…恥ずかしそうに呟いたAに、自然と笑いが零れた。
シャワーを浴びたせいで火照った彼女の頬を撫でて、首を横に振る。


「迷惑じゃないよ」

僕の傍に、いて。

25、彼女と朝食→←23、あの夜のこと



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真実(プロフ) - reさん» どの小説も読みやすかったです。一目惚れのお話は読んでいてこんな一目惚れの仕方もあるのかと感心しました!リクエストの件、ご無理はなさらずに形に出来そうであればお願いします!! (2021年8月6日 13時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - 真実さん» ぇええ?!全部読んで下さったのですか…?!(;-;)貴重なお時間を私の小説に割いて頂いて…う、嬉しすぎます…!本当に幸せです、ありがとうございます(;-;)一目惚れのお話も読んで頂けて幸せです…!リクエストのお話もいずれ形にできるよう、頑張りますね!^^ (2021年8月6日 7時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - reさん» 読んでいてお互いの気持ちを考えているのが分かるのでキュン死するかと思っています(因みにreさんの小説は全部読破しております/リクエストした際に言っていた降谷さんの一目惚れの小説も読みました) (2021年8月5日 21時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - 真実さん» 真実さん、コメントありがとうございます…!2人の、お互いを大切に想う気持ちを伝えられているのなら、私はとても幸せです…(;-;)とても嬉しいお言葉、いつもありがとうございます…!2人の幸せのために、続編も引き続き頑張りますね!^^ (2021年8月5日 19時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - 夢主には夢主の苦悩、降谷さんには降谷さんの苦悩と言うものがreさんの小説から痛いほど伝わってきますね。けど、それはお互いを大切に思っての事だと思うと切ない気持ちになります。続編も楽しみにしてます!! (2021年8月5日 13時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:re | 作成日時:2021年7月25日 15時

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