23、あの夜のこと ページ23
Aは、純粋で素直な女性だ。
キスをしたばかりの、快楽の続きを望むだけの頭で…答えた?もしくは、あの夜。
僕と " 何か " があったと…思っているから?
僕は、彼女を騙すような。最低なことをしていたと。思い至った。
" あの夜 " のことを。
きちんと、話してからじゃないと、ダメ…だと。
漸く、冷静になれたんだ。
こんな僕が今更、『誠実』になんかなれる訳もないけど。
「あの日の夜…本当は、何があったか…知りたいですか?」
突然のセリフに、困惑しているのが分かる。
彼女の身体からは、ほんの少し…熱が引いた、気がした。
『まだ、思い出してないでしょう?』と問えば、小さく頷いて。
「Aさんが、もし。この行為に対して、少しでも諦めの感情があるのなら…」
「あ、きらめ…?」
つい先程まで、身体の熱でぼんやりとしていた頭を必死に動かしながら…
僕の言葉を理解しようとする彼女の唇を、指でそっとなぞる。
Aにじっと見つめられて、僕はほんの少しだけ。微笑んだ。
「 " 1度しているかもしれないから、このまま流されてもいい " ……そんな、感情」
「…あ、むろさ…」
「もし、ほんの少しでもそう思って…僕に抱かれようとしているのなら。」
ー 拒否、した方がいい。
だって、僕達は…何もしていないんだから。
「あの日…の、こと…」
「うん。全部、教えるよ」
「はいはい、ストップ。…土下座しなくていいから」
「だだ、だ、だって…」
あの夜の出来事を、正直に伝えた。
玄関の前で眠ったAを、僕の部屋に運んだこと。寝ぼけたAが僕に抱きついて、自分で服を脱いでから、また布団で眠ってしまったこと。
そして。
……僕達は、本当に。何も無かったこと。
彼女は自分の行動が申し訳なさ過ぎたのか、また土下座をしようとして。
ケラケラと笑いながら、その身体を抱きしめた。
…やっぱり、Aはひどく誠実で素敵な女性だと。
好きだと、思った。
頬をそっと撫でて、顎を持ち上げる。彼女が瞼を閉じたのを合図に、触れるだけのキスをした。
「…っ」
「あの日、何も無かったと分かった今。…答えは変わりますか?」
真剣な表情で問うと、彼女はピクリと肩を揺らして僕を見つめる。
「貴女を求める…僕を。…拒否しますか?」
真っ赤な顔で、首を横に振った彼女に。
『ありがとう』と囁いて。
お互いの存在を確かめるみたいに。どちらからともなく…
また、唇を重ねた。
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真実(プロフ) - reさん» どの小説も読みやすかったです。一目惚れのお話は読んでいてこんな一目惚れの仕方もあるのかと感心しました!リクエストの件、ご無理はなさらずに形に出来そうであればお願いします!! (2021年8月6日 13時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - 真実さん» ぇええ?!全部読んで下さったのですか…?!(;-;)貴重なお時間を私の小説に割いて頂いて…う、嬉しすぎます…!本当に幸せです、ありがとうございます(;-;)一目惚れのお話も読んで頂けて幸せです…!リクエストのお話もいずれ形にできるよう、頑張りますね!^^ (2021年8月6日 7時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - reさん» 読んでいてお互いの気持ちを考えているのが分かるのでキュン死するかと思っています(因みにreさんの小説は全部読破しております/リクエストした際に言っていた降谷さんの一目惚れの小説も読みました) (2021年8月5日 21時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - 真実さん» 真実さん、コメントありがとうございます…!2人の、お互いを大切に想う気持ちを伝えられているのなら、私はとても幸せです…(;-;)とても嬉しいお言葉、いつもありがとうございます…!2人の幸せのために、続編も引き続き頑張りますね!^^ (2021年8月5日 19時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - 夢主には夢主の苦悩、降谷さんには降谷さんの苦悩と言うものがreさんの小説から痛いほど伝わってきますね。けど、それはお互いを大切に思っての事だと思うと切ない気持ちになります。続編も楽しみにしてます!! (2021年8月5日 13時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:re | 作成日時:2021年7月25日 15時