22、何も考えたくない ページ22
キスの途中、彼女の唇から漏れ出る声が甘すぎて…頭がおかしくなりそうだった。
普段の彼女からは想像もつかない、その吐息混じりの声がもっと聞きたくて。
僕の事しか考えられないように、したくて。Aに深く口付け続けた。
……キスぐらい、今更がっつくようなものでも無いのに。僕は思春期の子供か、と…本気で自分に呆れそうになったけれど。
あぁ、いや。…違う。
相手が " A だから " だ。
「ん、…ぅ、っ」
今…君を、『抱きたい』と言ったら
僕達の関係は、壊れるだろうか。
拒絶される分には、きっと良い。
Aは、ただ。家が隣だと気がつく前の…
" 僕が傍にいない日常 " に、戻るだけ。
僕の近くに居ることが、どれだけ危険か。知らないまま。
……それがAにとって、1番良いことだと。本当は分かってる。
のに。
僕の方からは、どうしても。離れる気には、なれない。
もし。
『好き』だと言われたら…『好きか』と聞かれたら。どうすれば、いい?
潜入捜査が終わるまでは、付き合う気もない、くせに。
本当は…Aの声で、その言葉が聞きたい。でも、まだ今は聞きたくない。
そのくせ、Aを抱きたい気持ちだけは。じわじわと、膨れ上がって。
……矛盾だらけの自分に、酷くイライラする。
何も考えたくない。
気持ちを制御、出来そうにない。
「…あ、む…、ぴ?」
唇を離した瞬間、足りない酸素を求めるように。身体から力の抜けた彼女が大きく息をしながら、僕を呼んだ。
その瞳には、僕しか映っていないから。余計に、Aが欲しくて堪らなくなる。
「……Aさんを、今。どうしても抱きたい…と言ったら。貴女は拒否しますか?」
「…っ、」
僕自身、君にどちらの答えを望んでいるのかも分からない。
" 好意は伝えないのに、抱きたい " …なんて。
そんな酷い話。Aにとっては、重荷だろう。
……本当に、ごめん。
君の傍にいると、
僕は……こんなにワガママで
最低な男になる。
彼女の頬を優しく撫でながら。
ただ、答えを待った。
「…拒否…なん、て」
Aの、小さな声が。
2人だけの静かな部屋に、零れ落ちて。
僕はただ、熱っぽく潤む彼女の瞳を見つめていた。
「…」
『拒否…しない、…です』。
その答えに、一瞬。身体の熱が疼いて。
すぐに、水を被ったように…冷静になった。
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真実(プロフ) - reさん» どの小説も読みやすかったです。一目惚れのお話は読んでいてこんな一目惚れの仕方もあるのかと感心しました!リクエストの件、ご無理はなさらずに形に出来そうであればお願いします!! (2021年8月6日 13時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - 真実さん» ぇええ?!全部読んで下さったのですか…?!(;-;)貴重なお時間を私の小説に割いて頂いて…う、嬉しすぎます…!本当に幸せです、ありがとうございます(;-;)一目惚れのお話も読んで頂けて幸せです…!リクエストのお話もいずれ形にできるよう、頑張りますね!^^ (2021年8月6日 7時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - reさん» 読んでいてお互いの気持ちを考えているのが分かるのでキュン死するかと思っています(因みにreさんの小説は全部読破しております/リクエストした際に言っていた降谷さんの一目惚れの小説も読みました) (2021年8月5日 21時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - 真実さん» 真実さん、コメントありがとうございます…!2人の、お互いを大切に想う気持ちを伝えられているのなら、私はとても幸せです…(;-;)とても嬉しいお言葉、いつもありがとうございます…!2人の幸せのために、続編も引き続き頑張りますね!^^ (2021年8月5日 19時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - 夢主には夢主の苦悩、降谷さんには降谷さんの苦悩と言うものがreさんの小説から痛いほど伝わってきますね。けど、それはお互いを大切に思っての事だと思うと切ない気持ちになります。続編も楽しみにしてます!! (2021年8月5日 13時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:re | 作成日時:2021年7月25日 15時