18、土曜の予定 ページ18
ーー
「ワァ…?!…あむぴだ?こんばんは…?」
平日の夜遅く、Aの家のチャイムを押した。これで2度目。
相変わらず、尋ねてきた奴をろくに確認もせずドアを大きく開けた彼女は、僕を見るとヘラリと笑った。
「今日は、どうされましたか?」
「…眠い」
「うーん、眠いかぁ…残念だけど、あむぴのお布団は隣だよ?」
ドアからひょこっと顔を出したAが、僕の部屋を指さしながらそう言った。
平日。仕事終わりの彼女は、ほぼ毎回ポアロを訪れる…とはいえ。
僕が夜に出勤していなければ、勿論会うことはない。
昨日から警察庁に缶詰めになって、溜まりまくった仕事をひたすら捌き…途中で組織に呼び出され、どうでもいい任務を押し付けられた。再び警察庁に戻り…書類の山と格闘。
…詰まるところ、疲弊した訳だ。
しかも、気がつけばAの部屋のチャイムを押していた。ほぼ無意識の行動だったから、正直僕は今焦っている。
「……僕を見捨てるんですか…?」
「…エッ」
「あぁ、いえ。…何でもないです。おやすみなさい」
「ぅ、え?!ちょ!…あむぴ?!」
僕は何故チャイムを押した?『見捨てるんですか』って何だそれ。
…疲れてるんだな。さっさと寝るか。
自分の部屋へ向かおうとすると、手首を掴まれて。足を止める。
「ご、ごはん!!あるよ?!今日は美味しく出来た、と思う!…えっ、と…アイスも、ある!たべる?!」
何故か焦った様子の彼女が、僕の手を両手で強く握り直した。
振り返ると僕の表情を伺いながら、あわあわと考えを巡らせているようで。
「……たべる」
「えーと、あっ!…あとね、私!こう見えても、マッサージ得意だから!ね!?」
……僕を必死に引き留めようとしてるのか。いや、何故だ?
普通に帰せばいいものを。
1人で騒いでいるAに手を引かれて、彼女の部屋にお邪魔することになった。
僕は、疲れると無性に…Aに会いたくなるのかもしれない。
彼女の温もりを、知ってしまったから。
笑顔を向けられると、心が穏やかになる事を…1度。知って、しまったから。
『好き』という言葉は、まだ伝えられないけど。
いつか絶対、僕だけのものにするから。
「アッ、あむぴ?あのっ…肩、こり過ぎでは…?」
「ん?気の所為じゃないですか?」
やっぱり、土曜は休もう。
「ぅ…石?」
「やだなぁ。それは失礼ですよ。…そんな事より、手が震えてません?」
「…ヒエ」
Aとデートをしようと、
決めた。
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真実(プロフ) - reさん» どの小説も読みやすかったです。一目惚れのお話は読んでいてこんな一目惚れの仕方もあるのかと感心しました!リクエストの件、ご無理はなさらずに形に出来そうであればお願いします!! (2021年8月6日 13時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - 真実さん» ぇええ?!全部読んで下さったのですか…?!(;-;)貴重なお時間を私の小説に割いて頂いて…う、嬉しすぎます…!本当に幸せです、ありがとうございます(;-;)一目惚れのお話も読んで頂けて幸せです…!リクエストのお話もいずれ形にできるよう、頑張りますね!^^ (2021年8月6日 7時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - reさん» 読んでいてお互いの気持ちを考えているのが分かるのでキュン死するかと思っています(因みにreさんの小説は全部読破しております/リクエストした際に言っていた降谷さんの一目惚れの小説も読みました) (2021年8月5日 21時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - 真実さん» 真実さん、コメントありがとうございます…!2人の、お互いを大切に想う気持ちを伝えられているのなら、私はとても幸せです…(;-;)とても嬉しいお言葉、いつもありがとうございます…!2人の幸せのために、続編も引き続き頑張りますね!^^ (2021年8月5日 19時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - 夢主には夢主の苦悩、降谷さんには降谷さんの苦悩と言うものがreさんの小説から痛いほど伝わってきますね。けど、それはお互いを大切に思っての事だと思うと切ない気持ちになります。続編も楽しみにしてます!! (2021年8月5日 13時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:re | 作成日時:2021年7月25日 15時