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「智、くん」
「・・・くんはいらない」
そう言うと私の唇を再び塞ごうとした。
「待って」
「待たない」
「だって、私はあなたの義理の姉」
「知ってる」
おでこをこつんとつけた距離で私を見つめる瞳がゆらゆらと揺れている。
「・・・寝てるのに」
「兄貴、あんなに飲んで寝たら、何があっても起きねえって」
・・・それは私も知っている。
外で結構飲んで帰ってくると、スーツのまま寝ちゃうこともあって、なんとか着替えだけはしてほしいのに、何をしても起きないから。
「・・・俺のせいにしていいから」
「・・・」
「もし、兄貴にバレたら、俺が酔っぱらって、無理矢理、って言えばいい」
「・・・違う」
「・・・え」
「無理矢理、なんかじゃ、ない」
その言葉が合図だった。
彼が私の唇を荒々しく塞ぐと、いつも見ていた綺麗な指が私のマキシワンピの裾から私の体のいろんなところを触れて、私の心を体を乱していった。
声を殺して・・・彼を受け入れた。
荒々しく、だけど優しく私を抱く彼に、私はいつの間にか意識を失っていた。
.
.
.
気が付いたのは、カーテンの外がうっすらと明るくなった頃。
ソファから起き上がって周りを見渡すと、智くんはいなかった。
ダイニングテーブルの上に置いたままになっていた食器はなくなって、食洗機の中に入ったそれは、綺麗になっていた。
慌ててスマホを探す。
カウンターの上に置かれたままになっていたスマホは緑色に点滅していた。
ロックを解除して開けば、智くんからのメッセージ。
「ずっと好きだった。これからもずっと好き。だけど、もう会えない」
彼からのメッセージを読んで溢れる涙。
「私も、ずっと好きだった。これからもずっと」
そう返信すると、スマホをカウンターの上に置いて、寝室に向かう。
ぐっすりと眠った夫。
寝室のクローゼットから、部屋着を取り出すと、お風呂場に向かって、ずっと残しておきたい彼の温もりと香りを・・・洗い流した。
私の送ったメッセージに既読が付くことはなくて。
彼から、「魚釣れたよ」ってメッセージが来ることも、魚を持って彼が家にやって来ることも・・・なくなった。
・・・これからもずっと好き。
彼のその言葉に囚われたまま、私は、今日も、夫に嘘の笑顔を見せる。
夫は私を疑うこともなく、愛してくれている。
大丈夫。
彼にはまた、会える。
私と夫が夫婦であり続ける限り、私と彼も”家族”なんだから。
end.
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とも(プロフ) - もぉ…どのお話も切なすぎて心がギュッと痛くなりました(T_T) (2017年10月29日 11時) (
レス) id: b4753fc97a (このIDを非表示/違反報告)
ｳｯﾁｰ(プロフ) - でいじぃさん。禁断のお話とてもよかったです。読んでいて何か鳥肌がじーんと、たってきて。こういうことってありだろうなって思いました。お話ありがとうございました。 (2017年7月17日 13時) (レス) id: 7f541d8bdf (このIDを非表示/違反報告)
なおち(プロフ) - やっぱり義理の弟シチュはたまりません（笑）主人公からの別れより相手からの別れの方が、心にグッときます。トラウマとは違うけど、これからもずっと影響、支配されるみたいな。 (2017年7月17日 10時) (レス) id: 4cd26d7ff0 (このIDを非表示/違反報告)
ぐちこ(プロフ) - こんにちは！更新ありがとうございました！『切ない』というキーワードの切ないお話。読ませていただきましたが、切ないけどそれぞれの終わらせ方がそれぞれに区切りをつけていて、悲しいだけではなかったです♪ありがとうございました(*^^*) (2017年7月16日 13時) (レス) id: 85c8073b6b (このIDを非表示/違反報告)
でいじぃ(プロフ) - ｳｯﾁｰさん» 禁断の香り、してますか？？夫の帰りが遅い・・・奥様には魅力的な言葉ですよね( ´艸`) (2017年7月10日 22時) (レス) id: 81a6b6fca5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：でいじぃ
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年5月24日 23時
