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電話から２時間くらいして、マンションのエントランスのインターホンが鳴った。
「はい」
インターホンに出る自分の声が、いつもより作ってる声だなって思いながら、インターホンの画面を見つめる。
インターホンの画面には、智くんの顔。
「あ、俺」
「うん、開けるね」
そう言って解錠ボタンを押すと、しばらくして部屋のインターホンが鳴った。
玄関を開けると、そこにはクーラーボックスと釣り道具を持った彼がいた。
「いらっしゃい」
「あれ？兄貴は」
「今日も仕事」
「忙しいんだね」
「あ、どうぞ、入って？」
招き入れると彼は私の横をすり抜けて玄関に入った。
ほんのりと海の香りがする。
「釣り。夜から行ってたの？」
「うん。あ、台所、借りるよ」
「適当に使って？」
彼はまるで自分の家のように、キッチンに向かうと、クーラーボックスを開けた。
「すごい、大漁！！」
たくさん魚の入ったクーラーボックスを覗き込んでそう言うと、
「今日は調子よかったんだ」
って彼は嬉しそうに笑った。
「これ、捌いちゃうね」
「お願いします」
彼は戸棚を開けると包丁を取り出して、まな板の上にクーラーボックスから出したアジを出した。
それを、手慣れた感じに捌いていく。
「すごいよね、智くん」
「こんなの、覚えたら簡単だよ」
「そうかなぁ、出来る気しないもん」
「Aさんならすぐだって」
「えー」
「あ、でも、鱗とか骨が指に刺さると痛てえし。俺が捌いちゃる」
そんな優しい言葉を掛けてくれるのは、私が、義理の姉だから。
そんなこと、わかっているのに、そんな風に優しくされると、うれしくなる。
私は彼の隣で、彼が魚を捌く様子をじっと見ていた。
きっとあなたは、私が魚の捌き方を覚えようと思って見ているって思っているだろうけど。
彼の綺麗な指で、私に触れてほしい。
・・・そんなことを思っているなんて知ったら、あなたはきっとここに来なくなるでしょ？
彼が魚を捌き終えそうなタイミングで、食器を出す。
「兄貴、帰ってくるの？」
「帰ってくるけど、たぶん遅いと思うよ」
「じゃあ、兄貴の分は別にしておくか」
そんなことを言いながら、お皿２枚に綺麗にお刺身になったアジを盛り付けた。
「兄貴は相変わらず忙しいな」
「おかげでこんなところに住めてます」
「でも、Aさんだって働いてるじゃん」
「まあ・・・でも、やっぱり彼のおかげだよ」
って言うと、
「すげえな、兄貴」
ってポツリと呟いた。
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とも(プロフ) - もぉ…どのお話も切なすぎて心がギュッと痛くなりました(T_T) (2017年10月29日 11時) (
レス) id: b4753fc97a (このIDを非表示/違反報告)
ｳｯﾁｰ(プロフ) - でいじぃさん。禁断のお話とてもよかったです。読んでいて何か鳥肌がじーんと、たってきて。こういうことってありだろうなって思いました。お話ありがとうございました。 (2017年7月17日 13時) (レス) id: 7f541d8bdf (このIDを非表示/違反報告)
なおち(プロフ) - やっぱり義理の弟シチュはたまりません（笑）主人公からの別れより相手からの別れの方が、心にグッときます。トラウマとは違うけど、これからもずっと影響、支配されるみたいな。 (2017年7月17日 10時) (レス) id: 4cd26d7ff0 (このIDを非表示/違反報告)
ぐちこ(プロフ) - こんにちは！更新ありがとうございました！『切ない』というキーワードの切ないお話。読ませていただきましたが、切ないけどそれぞれの終わらせ方がそれぞれに区切りをつけていて、悲しいだけではなかったです♪ありがとうございました(*^^*) (2017年7月16日 13時) (レス) id: 85c8073b6b (このIDを非表示/違反報告)
でいじぃ(プロフ) - ｳｯﾁｰさん» 禁断の香り、してますか？？夫の帰りが遅い・・・奥様には魅力的な言葉ですよね( ´艸`) (2017年7月10日 22時) (レス) id: 81a6b6fca5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：でいじぃ
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年5月24日 23時
