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「俺の両親に会ってほしい」
そう言われて、仕事が休みに土曜の午後、彼の実家に行った。
優しそうなお母さんと、そのお母さんを本当に愛おしい瞳で見つめるお父さん。
こんな両親に育てられたから、雅紀はこんなにまっすぐなんだろうって思った。
・・・私とは違って、両親の愛をいっぱい受けて育った人。
「おやじ、おふくろ、紹介するよ、山崎Aさん」
彼が私の名前を告げた途端、それまで穏やかな表情をしていた雅紀のお父さんは、私の顔をじっと見ると、青ざめた。
「・・・どうしたの、おやじ」
雅紀も父親の異変に気が付いた。
「結婚は認めん！」
雅紀の父親はそう言うと、制止する雅紀のお母さんの声も聞かずにリビングを出て行った。
「ごめんなさいね、Aさん」
「・・・いえ」
やっぱり、私は必要とされてないんだ。
私自身を否定された気がして、涙が出そうになるのを堪えて、
「ごめん、帰るね」
「送るから、待って、A！」
制止する彼の声を無視して、彼の家を飛び出した。
履きなれないヒールの靴で大通りに向かって必死に走って行って、目の前にやってきたタクシーを止めた。
乗り込もうとすると、
「A！待てって！」
って腕を掴まれた。
「ちゃんと話しよ？」
「私は話すことはない」
「ねえ、俺のこと見てよ！」
そう言われても、雅紀の顔なんて見られない。
私は雅紀のことを愛しているのに、やっぱり私は、必要のない人間なんだから。
「私と話しても何も解決しない。雅紀のお父さんと話しあって」
感情を込めずにそう言うと、私の腕を掴んでいた雅紀の手から力が抜けた。
その瞬間、
「・・・出してください」
タクシーの運転手さんにそう告げて、彼をその場に残したまま、私は逃げた。
タクシーの中で、スマホの電源を切った。
雅紀に逢うことも、連絡をすることもないまま、迎えた月曜。
仕事は休むわけにはいかなくて、会社に行くと、エントランスのところに立っている人影。
あれは雅紀だって、まだ離れた場所からでも分かる。
私に気づいた雅紀が私のほうにやってくると
「今夜、時間作ってほしい。話がある」
って真剣な表情で言った。
その表情から、いい話じゃないことはわかる。
雅紀は私に
「あとで時間と場所、連絡するから」
言うと、そのまま会社を出た。
”私は、雅紀にも必要とされなくなるんだ”って思って、泣きたくなるのを堪えてオフィスに向かった。
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とも(プロフ) - もぉ…どのお話も切なすぎて心がギュッと痛くなりました(T_T) (2017年10月29日 11時) (
レス) id: b4753fc97a (このIDを非表示/違反報告)
ｳｯﾁｰ(プロフ) - でいじぃさん。禁断のお話とてもよかったです。読んでいて何か鳥肌がじーんと、たってきて。こういうことってありだろうなって思いました。お話ありがとうございました。 (2017年7月17日 13時) (レス) id: 7f541d8bdf (このIDを非表示/違反報告)
なおち(プロフ) - やっぱり義理の弟シチュはたまりません（笑）主人公からの別れより相手からの別れの方が、心にグッときます。トラウマとは違うけど、これからもずっと影響、支配されるみたいな。 (2017年7月17日 10時) (レス) id: 4cd26d7ff0 (このIDを非表示/違反報告)
ぐちこ(プロフ) - こんにちは！更新ありがとうございました！『切ない』というキーワードの切ないお話。読ませていただきましたが、切ないけどそれぞれの終わらせ方がそれぞれに区切りをつけていて、悲しいだけではなかったです♪ありがとうございました(*^^*) (2017年7月16日 13時) (レス) id: 85c8073b6b (このIDを非表示/違反報告)
でいじぃ(プロフ) - ｳｯﾁｰさん» 禁断の香り、してますか？？夫の帰りが遅い・・・奥様には魅力的な言葉ですよね( ´艸`) (2017年7月10日 22時) (レス) id: 81a6b6fca5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：でいじぃ
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年5月24日 23時
