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ずっと見ていただけの彼が目の前にいる通学電車は、いつもより時間が経つのが早く感じた。
あっという間に、彼が降りる駅が近づく。
電車が停車すると、
「勉強、頑張れよ」
って言うと、開いたドアからホームに降りた。
そして、昨日みたいにホームに立ち止まったまま、私が乗る電車を見送る彼の口が、「またね」って動いたように見えた。
そんな都合のいい話があるわけないって思っていたら、次の日も、その次の日も、朝、私が乗っているドアから彼は乗り込んできて、
「おはよ」
って舌ったらずな挨拶をした。
彼が学校の最寄駅で降りるまでのわずかな時間だけど、一緒にいられるのがうれしかった。
だけど、彼の名前は分からないまま、夏休みを迎えた。
夏休みの間、部活なんかで電車に乗ることはあったけど、彼を見かけることはなかった。
いつもは夏休みなんて終わってほしくないって思っていたのに、初めて、夏休みが早く終わってほしいって思った。
2学期の始業式の朝。
40日ぶりに彼に会えるかもってドキドキしながら電車に乗り込んだ。
彼の最寄駅に電車が到着すると、私が乗っているドアから彼は乗り込んできて、
「おはよ」
って挨拶をした。
「・・・おはよう、ございます」
「夏休みは遊んだ？」
「いえ、部活があったので遊べなくて」
「俺の夏休みは、塾行って終わった」
って言う彼は夏休み前と変わらず白い肌。
それから毎朝、彼に会うとたわいのない会話をするようになった。
だけど、彼の名前を知ることもなく、ただ、同じ電車に乗っている顔見知りって距離のまま、彼は、入試が始まって、電車に乗らない朝も増えて・・・気が付けば、彼が卒業する春は目の前に迫っていた。
今度、彼に会うことができたら、想いを伝えようって心に決めた。
次に彼に会った時、彼の隣には・・・お姉ちゃんがいた。
私を見つけたお姉ちゃんが
「A！」
って私を呼んだ。
「あ、紹介するね、二宮くん」
「こんにちは、Aちゃん」
「・・・もしかして、彼氏？」
”違うよ！”って返事を期待して聞いた質問に、お姉ちゃんは
「塾の夏期講習で知り合って、同じ大学希望してて、２人揃って合格したら付き合おうって言ってて」
って嬉しそうに話した。
お姉ちゃんが塾に行ったのは夏休みから。
お姉ちゃんより私の方が彼に先に出逢っていたのに。
どうして、私じゃなくて、お姉ちゃん、なの？
伝えられなかった想いは、どうすればいいの？
.
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とも(プロフ) - もぉ…どのお話も切なすぎて心がギュッと痛くなりました(T_T) (2017年10月29日 11時) (
レス) id: b4753fc97a (このIDを非表示/違反報告)
ｳｯﾁｰ(プロフ) - でいじぃさん。禁断のお話とてもよかったです。読んでいて何か鳥肌がじーんと、たってきて。こういうことってありだろうなって思いました。お話ありがとうございました。 (2017年7月17日 13時) (レス) id: 7f541d8bdf (このIDを非表示/違反報告)
なおち(プロフ) - やっぱり義理の弟シチュはたまりません（笑）主人公からの別れより相手からの別れの方が、心にグッときます。トラウマとは違うけど、これからもずっと影響、支配されるみたいな。 (2017年7月17日 10時) (レス) id: 4cd26d7ff0 (このIDを非表示/違反報告)
ぐちこ(プロフ) - こんにちは！更新ありがとうございました！『切ない』というキーワードの切ないお話。読ませていただきましたが、切ないけどそれぞれの終わらせ方がそれぞれに区切りをつけていて、悲しいだけではなかったです♪ありがとうございました(*^^*) (2017年7月16日 13時) (レス) id: 85c8073b6b (このIDを非表示/違反報告)
でいじぃ(プロフ) - ｳｯﾁｰさん» 禁断の香り、してますか？？夫の帰りが遅い・・・奥様には魅力的な言葉ですよね( ´艸`) (2017年7月10日 22時) (レス) id: 81a6b6fca5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：でいじぃ
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年5月24日 23時
