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夕方五時の、少し前。弟と母親、そして父親が、我が家で一番広い部屋であるリビングダイニングを飾りつけたり、料理やお菓子の準備を進める__十二月二十五日、クリスマス。
コートを着込み、マフラーを巻いて家を出る。....ああ、やっぱり手袋もつけてくれば良かったかなぁ、なんて思いながらその手をポケットに突っ込んだ。
今日は、弟が友達を大勢呼んでクリスマスパーティーを開くらしい。当然行くあてもないけれど、その輪に混ざる気には当然なれない。....先生にもああやって言われたし、せっかくだから定期の使える範囲内で遊びに行こう、と思い立ったのだけれど。
「さっむ....」
家と学校の丁度あいだくらいにある、この辺りでは有名な繁華街。毎年この時期になると小規模ながらにイルミネーションが飾られて賑わいを見せる。....のを、見に行ってみようと思ったのだが。
カップル、カップル、その横もカップル....
この辺りでも一番大きなイルミネーションのある広場。一番人が多いであろうイブを避けたとはいえ、その賑わい具合は私の想像を遥かに超えていた。
....そんな中一人の私。そしてこの日の気温は、おそらく氷点下になろうというところで。寄り添うカップル達にとってはむしろその距離を縮める口実になるのかもしれないが、私にはそんな相手も居ない。
__きっと先生も、地元の方で彼女さんと、こうしてデートしてるんだろうな。
浮ついた街の雰囲気に反して憂鬱になりながら、ふらふらと街を歩いて時間を潰した。
カップルの多い辺りにもかなり長居をしたつもりだったけど、それでも携帯端末に表示された時刻は午後七時。....自宅はまだ、賑やかなパーティーの真っ最中だろう。
それがわかりきっているからまだ家に帰る気にはなれなくて。でも予想以上に厳しい寒さにそろそろ耐えられなくなってきた。ふと顔を上げたその先、道路を挟んだ向こうにコンビニを見つけて入って。その店内を軽くうろついてから、ホットのカフェラテを買った。
店を出て、広場の方を眺めながら道端でそれを飲む。....あ、砂糖入れるの忘れた。なんて思いながらも、その暖かさに少し気を抜いていた、その時。
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らぱん( ・×・ )(プロフ) - 辰海恋歌さん» コメントありがとうございます! 曲通りに終わらせましたが、この先きっとこの二人は幸せになってくれると思います!こちらこそ楽しんで頂けて嬉しいです、最後まで読んで頂きありがとうございました! (2019年4月8日 7時) (レス) id: 4213176f5b (このIDを非表示/違反報告)
辰海恋歌(プロフ) - 完結おめでとうございます。一言言えるのは、この中では、あの子が曲名通りになれて良かった…ということです。素敵で、もどかしくて、そして温かい作品を、本当にありがとうございました。読んでいてとても楽しかったです。 (2019年4月7日 23時) (レス) id: b18219f6f9 (このIDを非表示/違反報告)
らぱん( ・×・ )(プロフ) - てこゆのさん» ありがとうございます!私も似たような現象起こるのでお気持ち分かります(笑)でもこうしてコメントして頂けるだけで嬉しいです、ありがとうございます! (2019年4月1日 11時) (レス) id: 4213176f5b (このIDを非表示/違反報告)
てこゆの(プロフ) - 完結おめでとうございます!!つい最近になってこの小説を見つけたのですが、読み始めた瞬間から引き込まれてしまいました。他の方のように何かしっかりとした感想を書こうとしても、あまりにも素晴らしくて言葉が出てきません...!胸がいっぱいです!! (2019年4月1日 9時) (レス) id: 5d44cadab1 (このIDを非表示/違反報告)
らぱん( ・×・ )(プロフ) - Rinさん» 最後まで読んで頂きありがとうございます!クオリティ高くなってますでしょうか、嬉しいです....!曲への愛を詰め込んだ結果こんな感じになりました(笑) ありがとうございました! (2019年4月1日 7時) (レス) id: 4213176f5b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らぱん( ・×・ ) | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=d9fece3f785bc7d3ebaeeecd6103e95f...
作成日時:2019年3月19日 18時