一番にはなれない【💛】 (ページ39)

今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:66,491 hit

・ページ39

・

その日の放課後、私は浮ついた足取りで資料室へと足を向けていた。

....確かにあの噂を聞いた瞬間は落ち込んだ。でも、その後ずっと、考えていたのである。
あの子は、折原先生本人が、言っていたのだと話していた。....でも、先生が自分に彼女が居るなんて話を聞くどころか、そんな素振りを見せることさえなかった。それに、先生にたとえ彼女が居たとしても、噂話を否定する為だけにわざわざそこまで言う訳が無い。

きっと優しい先生の事だ。まだ付き合ってはいないけど、相手が私だってばれないうちにかき消そうとしてくれたんだ。....そう信じて、資料室の扉を開けた。

「先生」

「....A。」

「お久しぶりです」

「うん、久しぶりやね」

先生は、相変わらずの笑みを私に向けてくれた。....ほら、やっぱり。先生は私の事、庇ってくれただけだよ。

そうして椅子に座って、何時ものように他愛のない会話をする。
「夏休み明けたのに涼しくならないですね」とか「雨でも降ったらもう少し涼しくなるんやろうけどね」とか。

....あの日は冷たく突き放されたけど、変わんないじゃん。きっと先生、驚いちゃっただけだよね。

「ねぇ千羅先生」

「ん？」

「先生に彼女居るって噂流れてますね」

「....んー、せやね」

「ありがとうございます」

「........ん？」

・