検索窓
今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:66,467 hit

15 ページ38





「....はぁ」



....あれから....あの夏休みの日から、数週間。夏休みが明けてから、一週間くらい。
新学期は、前期と違う、苦しい毎日だった。

時間割が変わって週一回、水曜日だけになった世界史の授業。課題提出を言い訳に先生と会えるチャンスは減ってしまった。でも先生はまた少し忙しくなったみたいで、課題を出しにその部屋に行っても部屋の鍵さえ開いていなかった。代わりに廊下に置かれた机と『課題はこの中にお願いします』と書かれた段ボール箱に、指示通りにして家に帰る日々が続いた。

そして一番苦しかったのは....夏休みのあの日以降、授業中でさえ、先生と一度も目が合わなかった事だった。


そんな長い長い体感時間の、世界史の授業の後。休み時間になってざわつく教室の中で、とある女の子の声が耳に入ってきた。



「そういえばさ、折原先生が女子生徒の誰かと付き合ってるって話、結局どうだったんだろうね」



あの噂だ。....そうだ、まだ先生と私は、そういう風に見えてるんだ。
....まだ、大丈夫。巻き返せるよ。だって、今年の私の強運具合は異常だし。

そう言い聞かせても前みたいに優越感なんて湧いてこなくて、むしろ胸にぽっかりと穴が空いたような虚しさに襲われて。それから逃れたくて教室を出ようかと机の上を片付けた所で、話の続きが耳に入ってきた。



「でもなんか、先生彼女居るらしいよ、地元の方に」

「なんだぁ、そうなの?」

「前田があの噂本当ですかって聞いたら、先生が同い年の彼女居るって言ったんだってさ。」

「ちぇ、なんだ。生徒でもワンチャンあるのかな〜とか思ってたのに」

「それは無いって確定しちゃったね」



冗談交じりに言う女の子達二人の笑い声が、遠のいていく。


....え?先生に彼女?....そんなの聞いてない。何それ。どういうこと?
数学の先生が入ってきてふっと現実に引き戻されて、慌てて教科書を引っ張り出した。
けど、授業どころではないくらいにその噂が頭の中をぐるぐるしていた。




・→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (55 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
129人がお気に入り
設定タグ:センラ , 歌い手 , 浦島坂田船
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:らぱん( ・×・ ) | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=d9fece3f785bc7d3ebaeeecd6103e95f...  
作成日時:2019年2月23日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。