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あれから、二週間程。新学期が始まった。
担任としての唯一の懸念はAが不登校にならないか、という所だったけれど、彼女は__お世辞にも元気に、とは言えない様子だったけれど__きちんと始業式から登校してきた。
そうして短い始業式とホームルームが終わり、放課後。Aはすぐに帰ったようだった。
自らそうしたとは言え、この学校に来て以来ずっとだったその関係が途切れてしまうのは、少し寂しかった。
そんな、教師としてはあまり宜しくない事を考えながら、当番制の教室掃除の手伝いをしていた時。
クラス一のお調子者、といっても過言ではない男子生徒に「先生、聞きたい事があるんすけど〜」と声を掛けられて。
「ん〜?何?」と柔らかい声を返して振り返った所で、その好奇の目線に「ああ、ろくな事聞いて来うへんなこいつ」と思った。そうして続けられた言葉は、案の定ろくでもない内容だった。
「先生、Aと付き合ってるって本当ですか」
教室内の空気が一瞬ぴたりと凍りついた。
そんな噂がしばらく前から広まっているのは知っていた。....彼女が極端な行動に出たのもそのせいか、と今思えば合点がいく。
黙り込んで返事をしない僕にざわつき始めた数人の生徒に、僕はとぼけた顔で__いつもの笑みを貼り付けて、こう返した。
「なんやそれ?先生、地元に同い年の彼女居るんやけど」
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作者名:らぱん( ・×・ ) | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=d9fece3f785bc7d3ebaeeecd6103e95f...
作成日時:2019年2月23日 17時