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「....さっきの、なんて書いてあったん?」
「え?」
さっきの。....きっと、今私の右手の中でぐしゃぐしゃになっている黄色い付箋のこと。
相談したいことなんて何も無いのにどうしよう....とテンパる私に、追い討ちの一言。
「いや、あれ結構楽しみなんよ。忙しい中での癒しというか」
い、癒し!?
....先生、この付箋喜んでくれてたんだ。
私の好意が少しでも伝わって、しかもそれが喜ばれている。
本人の口から聞いたその言葉に思わずにやけてしまって、そんな顔を見せるわけにもいかずに顔を伏せた。
....それに、今はそれどころじゃない。
相談、相談....当たり障りなくて、それでも先生と関われて....
俯いたまま考えていた私に、「嫌やったらええんやけど、見せてくれへん?それ」と言いながら先生が近付いてきて。
もうなるようになってしまえ!と右手を開いて、折原先生の方にその中身を差し出す。
まだ時間はある。考えろ、考えろ........何か、何か....
「....相談って?」
先生が付箋紙から目線を上げて、再びぱちりと目が合う。
ああ、駄目だ。やっぱり格好いい。....耐えきれずに、また目線が下がってしまう。
「あ、いや....その、先生には悪いんですけど」
「気にせんでええよ?....まぁ今言いづらいなら、また次の課題の時に付箋に書いてくれてもええけどね」
いやそんな、気を遣わせてしまってすみません!完全に私が悪いです!ただ先生とお話したかっただけなんです!
....なんて、素直に言える訳もなくて。言い訳を必死に考えながら、「いやそんな、大したことじゃなくて」なんて口にした所で、ひとつだけ言い訳が頭に思い浮かんだ。
....完全に思い付きだけど、これで行くしかない。それ以外何も思いつかないし。
「その....ちょっと、世界史苦手で。中間テストも来週だし、放課後に教えて貰えたりとか....って、駄目ですか」
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作者名:らぱん( ・×・ ) | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=d9fece3f785bc7d3ebaeeecd6103e95f...
作成日時:2019年2月23日 17時