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坂田side
「…はあああ」
ゆっくりドアを閉めて、大きくため息。
荒くなる足音を懸命に抑えて、リビングに戻る。
食器棚からタンブラーを出し、冷蔵庫から酒を数本拝借してから、忍び足で防音室へ。
両手がふさがっていたので、肘でドアを開ける。
入口につっかえてた何らかの機材が入ってたであろうダンボールを蹴飛ばそうとして、爪先に痛みが走った。
うわぁ、いった、絶対内出血してるやん。
もう最悪や…
ドアを背中で閉めようとして案外大きな音がなり、心臓が一瞬止まる。
テーブルに持っていたものを無造作に置き、チェアにどさりと座りこんだ。
そんないいやつを買ってるわけじゃないから、普通におしりが痛い。
「もう、ムカつく!
なんなんほんま…
あー、もう、ムカつくー!」
ゲーミングチェアの上で足をバタバタさせて、イライラをどうにか発散させようとした。
ふわふわのケンちゃんクッションとか、そこら辺に落ちたまま片付けていないタオルとか、後片付けが簡単そうなものを機材に当たらないようにぶん投げる。
でもそんなものでイライラがおさまるわけなんかなくて。
これは飲むしかない、と缶を開ける。
タンブラーに注ぎ、酔いやすい自分にしては大胆な量を一口で呑んだ。
「もうっ、ばかばか、ばーか!
あーもう、ムカつく…」
ムカつきすぎて、何を言えばいいのか分からない。
語彙力皆無なのはいつもの事だが、今は死ぬほどの不機嫌もセットだった。
やけ酒で感情が昂ったからか、悲しくもないのに涙が出る。
顔はもうぐしゃぐしゃで、涙はパジャマに落ちていた。
ぽろぽろと止まらない無意味なそれを、ぶん投げたタオルを拾って乱雑に拭く。
目元がひりひりした。
「もお、うっとおしいなぁッ!!」
拭ったタオルを八つ当たりのようにまた床に投げすてる。
こういう所が子供っぽいって言われる要因なんやろうな、と思う。
でも、しょうがないやん、今は。
パジャマに落ちた水滴は、ぺっぺっと手で適当にはらった。
「…びちゃびちゃやし……最悪」
でもあまり思ったようにはらえなくて、結局びちゃびちゃになったのに、またイラッとくる。
涙は溢れて止まらないのに、悲しくはない。
いや、やっぱ悲しいかも。
ちゃうちゃう、腹立ってるだけやろ。
でもやっぱ、悲しいんかも。
分からん。
ぐちゃぐちゃや。
俺も、Aも、全部。
「…しんどい……………」
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いろみず(プロフ) - うぐぅ…尊し… (2021年9月12日 21時) (レス) id: be92b83ba0 (このIDを非表示/違反報告)
いろみず(プロフ) - 弥生2nd@夢見月さん» いつ見てもお肌綺麗ですよね…特にセンラさん(( (2021年8月7日 22時) (レス) id: be92b83ba0 (このIDを非表示/違反報告)
弥生2nd@夢見月(プロフ) - いろみずさん» そりゃもううらたさんとセンラさんはうしさせの美肌代表ですから… (2021年8月4日 0時) (レス) id: c09bebec20 (このIDを非表示/違反報告)
いろみず(プロフ) - 「いいな、その肌。くれ。」で盛大に吹いた(( (2021年8月2日 10時) (レス) id: be92b83ba0 (このIDを非表示/違反報告)
弥生2nd@夢見月(プロフ) - いろみずさん» 全然返信できてなくてごめんね…また読みに来てくれて嬉しい!さかたん応援隊が増えたなあ… (2021年7月10日 21時) (レス) id: c09bebec20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:弥生2nd@夢見月 | 作成日時:2020年11月29日 1時