え？ 彼氏？ 普通に一般人ですけど。THE SECOND 【となりの坂田。】

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棗side

Aちゃんがメイク直しに行った後、美月ちゃんが鬼の形相で携帯の画面を睨みつけている。

Aちゃんの前ではあんなに聖母のような笑みを浮かべていたのに！

怖い。

ただただ怖い。

できるだけそちらを見ないように顔を背けていると、美月ちゃんは大きな溜息をつき、スマホを机においた。

｢マジムカつく…｣

“なにが”だなんて、問わなくてもわかる。

もちろん、あのなりすまし犯の事を言っているのだ。

美月ちゃんはロングの髪を無造作に掻き乱して大きく舌打ちをした。

机におかれたスマホ画面には、例のアカウントのツイートの数々。

彼氏じゃないにしてはなかなか大胆で不躾なツイートばかりが並ぶ画面を、わしも思わず睨む。

｢ほんとサイテー…
あったまおかしいんじゃないの……｣

美月ちゃんは頭を抱えて、眉間にシワを寄せる。

美月ちゃんの怒りようには驚くけど、その考えには激しく同意する。

Aちゃんの彼氏は、さかたんだけやのに。

｢ほんまにそれはわしも同意見やわ。

まあネットって誰が書いたかわからんからそんなんできるんやろうな。

こんなんじゃAちゃんが可哀想やわ｣

そう言うと、美月ちゃんは半泣きでこくりとうなずいた。

Aちゃんがいなくなったからか、姉モードから妹モードに切り替わって急にしおらしくなる。

｢やだなぁ…
もう、Aにはやな思いさせないって決めてたのに…

また、泣かせちゃった……｣

そう言う美月ちゃんの頭をゆっくりと撫でる。

わしは高校の頃から美月ちゃんとAちゃんの姉代わりみたいな立場やったから、2人のことはよく分かる。

親友という言葉が本当にぴったりな2人だった。

｢別に、美月ちゃんのせいちゃうやん。
な？やから気にせんとき｣

そう慰めると、美月ちゃんはゆっくりと顔を上げる。

｢うん、そうだね。

でも…腹立つなぁ…
絶対、なりすましなんか潰してやるんだ｣

その鋭い眼光に、背筋がヒヤリとした。

｢高校の時から今まで、私はずっとそうだよ。

私の親友を傷つける奴は誰であろうと潰してやるって、決めたから｣

でも、それと同時にわしの顔にも笑みが広がる。

それはわしも美月ちゃんと同じ気持ちだから。

｢そうやね、それじゃ＿＿＿｣

“なりすまし犯、頑張って一緒に潰そっか！”

わしの言葉に、美月ちゃんはにっこりと微笑み返した。

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