え？ 彼氏？ 普通に一般人ですけど。THE SECOND 【となりの坂田。】

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Aside

いやだ、いやだ、いやだ!!!

頭痛がして、頭を抑える。

『＿＿＿＿え？』

涙で潤む視界によく目を凝らすと、焦燥感溢れる表情でこちらを見つめる美月。

あの時と全く同じ、表情だ。

“A!!!
どうしたの、あんた、なんでドアが＿＿＿＿＿




何これ、開かないんだけど!!!
どうなってんのよ……!!!!!!”

セミの鳴き声がやかましい真夏の教室の中に1人。

開かないドアの向こう側のクラスメイト。

金縛りにあったかのように強張り、上手く動いてくれない体。

青ざめた顔で思い切りドアをぶち破り、こちらに駆け寄ってくる美月。

そんな気分が悪くなる、忘れてしまいたいシーンが耳障りなノイズと妙にリアリティのある感覚と共に頭の中に流れてくる。

大の苦手であるホラーゲームのように、チカチカと点滅しながら。

白くなり、黒くなり、灰色になり、また、白になる。

悠、悠はどこなの……?!

視線をさまよわせてみても、私の大好きな彼は見つからない。

息が苦しい。

呼吸が上手くできない。

息苦しさと恐怖のせいで視界が潤む。

助けて、助けて、助けて＿＿＿＿＿

“ねえ、出してよ!!!





誰か、助けてよぉ………………”

｢A!!!
ごめん、いやな事思い出させて!!!

A、ごめん、ほんとに……｣

ガクガクと美月に肩を揺さぶられて、意識が正常に戻る。

目の前には、美月とくろちゃん。

周りは教室などではなく、おしゃれなカフェの個室。

くろちゃんが背中を優しく叩くリズムに合わせてゆっくりと呼吸をする。

『わ、わたし…』

そう呟いた後、ごほごほと咳をする。

ぼろぼろとこぼれる涙は止まらない。

｢ごめん、ほんとに……｣

くろちゃんも美月も半泣きで、私はまた、あの時のことを思い出す。

あの時も、美月は泣いていた。

腰が抜けてたてなかった私を抱きしめて、大声で泣いていた。

これで美月を泣かせるのは2回目だ。

ぐすぐすと鼻をすすりながら美月の背中に手を回した。

高校生の時よりも、ずっと華奢になった体。

美月のショートボブだった髪の毛は、もう腰の辺りまで伸びている。

大丈夫、私たちはもう高校生じゃない。

誰も私を閉じ込めたりしない＿＿＿＿

｢とりあえず、今日は解散しよ？

美月もAちゃんもちょっと調子悪いみたいやし、これ以上なりすまし犯の話するのは精神的にもよくないと思うから｣

くろちゃんは真剣な顔でそう言うが、彼女の瞳もまた、涙で潤んでいた。

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