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下野side
タオルで手を押さえていたが、俺には神代さんの色白の手に似つかわしくない
赤色がハッキリと見えていた。
そしてなぜだか、お手洗いに走って行ってしまった神代さんを追いかけていた。
...ス、ストーカーとかじゃねえぞ、これは。だた..ちょっと心配だった。
堂本さんに怪我した事を、隠してたみたいだったから。
しばらく外の廊下で待っていると、神代さんが出てきた。
タオルで押さえていた方の手には、私物だろうか..ハンカチが巻かれている。
お世辞にも綺麗に巻かれてはいないハンカチには、うっすらと血が滲んでいた。
俺の存在に気が付いた神代さんは、手をサッと後ろに隠した。
あ〜あ、そんな事したらバレバレだっつーのに...まぁもう分かってるんだけど。
俺は神代さんの手を引いて、堂本さんに事情を説明しに行ってマネージャーに
神代さんと病院へ行ってもらう事にした。
堂本「..下野さん、すいません。ご迷惑をおかけして」
下野「いえ、気にしないで下さい。多分、堂本さんには迷惑かけたくないと
思って、言えなかったんだと思いますよ」
堂本「そんな事気にしなくていいのに..」
下野「優しいんですね..神代さん」
自然と自分の口からポロッと漏れた言葉に、俺はハッとした。
堂本さんも目をパチパチさせてこちらを見ている。
下野「...いや〜、俺も新人の頃は先輩方に迷惑かけたらいかんと思って
アフレコの時は冷や汗ダラダラでしたよ〜あはははは」
堂本「確かに..僕もそうでした」
な、何を焦ってるんだ俺は..。
ただ神代さんの事優しい人ですねって言っただけなのに。
堂本「ただ..」
下野「??」
堂本「美容師にとって、手はとても大切だから..。
もっと自分を大切にしてほしいですね、店長としては..」
そうだよな、俺達声優が喉を人一倍ケアするのと同じだよな。
堂本「..下野さん」
下野「はい?」
堂本「神代は地方から出てきてまだ間もないですし、頼れる人も少ないみたいで。
僕も極力目を配ってはいるんですが、ずっと見ていられるかと言われると
正直難しいです」
下野「...」
堂本「今日の様子を見ていて、下野さんに対してはリラックスして自分を
出せている気がしたので、また仲良くしてやって下さい」
下野「..はい、俺で良ければ」
何だろう、この気持ちは。
手のかかる妹が増えた感じだろうか..。
神谷「下野く〜ん、撮影始めるってー!」
下野「あ、はーいっ」
俺はこの心情を理解出来ないまま、撮影スタジオに向かった。
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Shima(プロフ) - すみかさん» コメントありがとうございます!楽しんでいただけて良かったです(^ ^) (2016年8月23日 16時) (レス) id: da5ff44bdc (このIDを非表示/違反報告)
すみか - とてもいい作品でした。読んでいてたのしかったです! (2016年8月23日 16時) (レス) id: face6a46eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Shima | 作成日時:2016年7月4日 16時