太宰さんと風邪。2 ページ15
顔だけひょこっと出すと、鼻をくすぐるお出汁の匂い。
『いい匂い…』
太「でしょ?食べられるだけ食べて?」
もぞもぞと布団から抜け出し、ローテーブルの前についた。
『食欲は、全然ないんだけど、食べたい…』
太「うん、薬も飲まなきゃだから一口でも食べて。無理はしなくていいからね。」
治さんはいただきまーす、と自分も食べ始めた。治さんの朝食でもあるのだろう。
『あ、書類!国木田さんにも連絡しなきゃ』
太「全部気にしなくていい。鍵は敦くんに渡して、その書類だけ抜いて鍵は帰りに届けてもらうようにしたし、国木田くんへの連絡もしてある。私も含めてね。」
『治さんもお休みにしてしまったんですか…ごめんなさい…』
太「謝ってばっかりだねぇ。それはAちゃんといい所であり悪い所だ。」
私はお粥を口に運ぶ治さんを見つめる。すると何を思ったのか、こちらをちらりと見て目が合った後、私の前のお椀を手に持ち、蓮華に少量掬ってふーふーと冷まし始めた。
その姿もただじっと見つめる。
太「ほら、あーん。」
それを冷めたから、と私の口元に突き出す。
『あ』
と声を出して口を開ける。口に運ばれるお粥は、とても優しい味で、ふわふわと揺れ続けていた頭が少し落ち着いた気がする。
太「美味し?」
『とても。』
太「それはよかった。」
数口食べ、胃の限界を感じた為に完食は断念した。
太「さ、お待ちかねのお薬の時間だよ。」
『…そんなおっきいの無理です。』
錠剤のサイズが桁違いなのだ。喉に詰まってしまう。
太「そんなに大きくないでしょ。」
頬を安心させるように撫でながらも親指で唇を撫でられる。口は開きません。
太「頑固なんだから。」
ずっと唇を撫でられていると野生の本能といいますか…なんと言いますか…「嫌!」という気持ちも込めて、かぷりとその親指に噛み付いた。馬鹿だねぇ、と言いながら治さんは奥に親指を進めた。
『んんん!?』
太「大人しくしてね。」
後ろに倒れた私の足の間に入り、暴れられないようにおさえられる。そのまま舌を遊ばれる。
『んんっ…や!』
やだ!と言うが、なかなかやめてくれない。
『ん、んぅ、ふ、ぅ…』
太「気持ちよくなってきちゃった?」
指を抜かれ、ぐでっと口を開けたまま脱力する。口内に錠剤を入れられ、治さんに口付けをされる。
治さんの口から水が流れ込む。私は溺れそうになりながらも必死で飲み込む。
太「…ん、よく飲めました。」
『疲れました…』
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外套
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月 - めぐ様の作品いつも楽しみに、見させてもらってます!太宰さんの一言一言でニヤけてしまいます(笑)これからも、番外編楽しみにしています!めぐ様、応援しています!! (2020年5月27日 21時) (レス) id: 40d6e906a3 (このIDを非表示/違反報告)
ニケ(プロフ) - お返事ありがとうございます!いつも素敵な作品ありがとうございます。このご時世なので体調はお大事にして下さいね (2020年5月16日 23時) (レス) id: e4acd479d7 (このIDを非表示/違反報告)
めぐ(プロフ) - ニケさん» 読んでいただきありがとうございます!異能!たしかに番外編ではあまり触れていませんでしたね!教えてくださってありがとうございます! (2020年5月16日 18時) (レス) id: 6e196d0d59 (このIDを非表示/違反報告)
ニケ(プロフ) - シリーズ読ませて頂いてます!太宰さんと主人公のほのぼの感がとても好きで、ストーリーが面白いです!私は主人公の異能絡みの話を読んでみたいです!(主人公の異能の成長さや、狙われるとか…です!)厚かましくすみません。更新頑張って下さい!応援してます (2020年5月16日 16時) (レス) id: e4acd479d7 (このIDを非表示/違反報告)
めぐ(プロフ) - ぽっくさん» 初めまして、コメントありがとうございます。夜しか眠れないのなら集中してじっくり眠ってくださいね!(?)これからも応援よろしくお願いします(〃'▽'〃) (2020年5月11日 14時) (レス) id: 6e196d0d59 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:めぐ | 作成日時:2020年4月27日 17時