絶対零度の雨 ページ36
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「お嬢様、少しお時間宜しいでしょうか」
あんなに無いと言っていた仕事を理由に依頼を断られた日から、丸三日。内容がどれくらいの大きさなのかも不明だし、勝手な憶測でしかないけれど、邪魔をしてはならないと電話は掛けていない。
久しぶりに訪れた退屈な日々にも慣れを取り戻し始めた頃、自室で勉学に励んでいた私を、やけに神妙な面持ちのじいやが訪ねてきた。筆を置き、きちんと向き直る。
「なあに?」
「…………実は先程、旦那様から連絡がありまして」
「お嬢様を、京に行かせろ、と」降り注ぐ雨が屋根から地面へと落ちる水滴のように、ぽつりぽつりと適切な語を紡ぐじいや。イマイチ意味を把握出来ていない私は「どういうこと?」と、素直に感想を述べた。
「つまりは、お嬢様は京で勉学に勤しむことを余儀なくされたというわけでございます」
「…………そう」
父上からの突拍子もない司令は、十数年間で疑問を持つだけ無駄だという性格を形成し尽くした私にとって、最早驚くべきことではないという認識である。だからかあっさりとした返事しか漏れてくれなかったのだけれど、雨水はこちらの気も知らずに着々と地面を穿ち続けた。
「五年程度はあちらで暮らすかと、思われます」
五年、かあ。
脳内に住まう冷静沈着な私は、呑気に年齢を計算している。しかし感情が剥き出しの自己中心的な考えを持つ私は、長いだの、行きたくないだの、非現実的なことばかりを喚いていた。うるさくて仕方ない。
「因みに、いつ出発?」そう問うてみるとじいやは、誰よりも寂しそうに、誰よりも悲しそうに言った。
「明後日のパーティを終えた、その次の日には……」
「…………」
それは、あまりにも残酷な報せで。
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堕天使(プロフ) - 瑠々さん» 返信遅れました瑠々さーーん!いつもありがとうございますほんとにすきです。そう言って頂けて嬉しい限りですが全然、私なんてまだまだ全然です。これからも精進していきたいですよろしくお願いします!! (2019年5月25日 22時) (レス) id: 725743dc16 (このIDを非表示/違反報告)
瑠々 - 面白かったです。とても。どう頑張っても、堕天使さんの文章には追いつけませんね。 (2019年5月18日 6時) (レス) id: ff21270137 (このIDを非表示/違反報告)
堕天使(プロフ) - 柚木さん» 柚木さん!!コメントありがとうございます!!もう、ほんとに嬉しい限りで嬉しいがすぎて令和早々死にかけておりますが、柚木さんのために生きて更新頑張ります!!!!(;;)こちらこそ平成は素敵なものになりました、ありがたいです、私もずっと愛しております!! (2019年5月8日 13時) (レス) id: 725743dc16 (このIDを非表示/違反報告)
柚木(プロフ) - 堕天使さあああん!!!本当に大好きです!!なんでこんなに面白い作品を作ってくれるんですかァァ!!平成ではありがとうございました!!令和も負担がかからない位で活動を頑張ってください!!大好きです!!愛してます!! (2019年4月30日 22時) (レス) id: fe2805c04d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:堕天使 | 作成日時:2019年4月11日 20時