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【沖田サイド】
「総悟ォ!?バズーカじゃなくて刀構えろ、刀!!いつから銃撃部隊になったんだ一番隊は!!」
「つい昨日から」
「トシ!?まだ突入しないから!!刀抜いちゃダメだから!!」
淀んだ空は、泣いていた。
それは、泣いたから淀んだのではなく、淀んでいることに泣いていたのだ。雨となって降り出した大粒の涙が、松平のとっつぁんからの「突入!!」という声を待ち続けてかれこれ数十分程経過した俺達真選組の、隊服に染みを作り出す。それでなくとも真っ黒だというのに、困ったもんである。
攘夷志士一派をいち早く殲滅するという任務に、"待ち"という行為自体の存在意義を感じられない。それだけ大きな粛清なのだと、緊張感をわざと演出する為のものでした、とか言い出したら上司であろうとグラサンであろうと、問答無用で叩いてしまいそうな気がする。近藤さんは、俺と土方さんを止めた。
──寧ろ、緩んでいた空気。
汚れ切った大気中を逆に絶好の機会だと踏んだ敵は、すっかりこちらの手の内を知っていたようで、突発的に意図せずに意図していた戦闘が始まってしまう。
「刀を抜けテメェらァァアア!!」
もう、とっくに抜いてら。
心の中でボソッと蔑みながら、鉄の塊を振り回す。
死を意識した途端に、止めどない高揚感と真実が闇に葬られる危機感が同時に押し寄せてきて、またいつものフラッシュバックが開始される。
"「じゃあ、分かった」"
"「なにを」"
"「生きろ!!」"
"「……はぁ」"
赤みがかった繊細な髪の毛を存分に揺らして、そいつが出来る精一杯の笑顔を俺に向けて、そう言い放ったあの瞬間。バカで真っ直ぐな不器用女の顔と、透き通った芯のあるバカデカい声が、いつも蘇るのだ。
"「生きて、私に毎月、江戸ばななを送れ!!」"
最後の最後までピンピンに食い意地しか張らず、腫れた目を隠し通したつもりでいたあの女は、記憶の片隅で毎度毎度、同じことを言いやがる。もう、聞き飽きた。
"「総悟が頑張って生きるなら、私も……頑張れるから」"
今どこでどうそれを実行しているか、近況すら教えてくれやしないけれど、きっと世界のどこかでバカをやっていると信じて、俺は毎月江戸ばななを送っている。
宛先は、変わらない。苗字こそ、変わらない。
届いているかすら、知らない。
「生意気、言いやがって」
瞳孔をかっ開いて血走る敵の目を見て、憎しみを歯軋りに込めてやれば、それを糧に力を振り絞る脳内に勘付くのだった。
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なゆなゆ(プロフ) - リクエストです。もうすぐ誕生日なので辰馬で作って欲しいです! (2018年7月27日 12時) (レス) id: 299a5e5ef0 (このIDを非表示/違反報告)
おと(プロフ) - 堕天使さん» 草。 (2018年7月14日 9時) (レス) id: 6e4da90966 (このIDを非表示/違反報告)
堕天使(プロフ) - おとさん» 泣いた (2018年7月14日 7時) (レス) id: 725743dc16 (このIDを非表示/違反報告)
堕天使(プロフ) - シャープ♯さん» いえいえこちらこそリクエストありがとうございました!またいつでもお待ちしているので、気軽にどうぞ!!そして、お誕生日おめでとうございます(いつか知らない)幸せな毎日を遅れることを祈っております! (2018年7月14日 7時) (レス) id: 725743dc16 (このIDを非表示/違反報告)
おと(プロフ) - 堕天使さん» そしてすき。大好き。愛してる。 (2018年7月13日 20時) (レス) id: 6e4da90966 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:堕天使 | 作成日時:2018年6月20日 16時