感触 ページ6
「……っ」
まただ。
朝会社に行き、エレベーターに乗る。
そこは毎度ギュウギュウのため、人と人の隙間がない。
それが嫌だから階段で、という人も中にはいるけれど
私たちのフロアはかなり高いところにあってそうともいかない。
だからやむを得ずエレベーターに乗っている。
最近、体に違和感があった。他人から触られている違和感。
最初はただカバンとかがぶつかっているだけだと思っていたけど、日を追うにつれそれが手だとはっきり分かった。
手の感触がない日もある。でも触られている日は必ず近くにあの上司がいる。
エレベーターが目的地に着き、やっと降りた。
感触がなくなった自分のお尻をそっと触る。
「……帰りたい」
ともには上には言ってある。と言ったが、
この件については言っていない。
ことあるごとに動かない上の人間にこれを言ったところで
むしろ私が生きにくくなるくらいなら黙っておこう。となんとも自分勝手な理由だけれど、
それにコタキチにバレるのもなんとなく嫌だ。
『A、おはよ。
また触られたん?』
「と、とも……怖かったっ……」
『っ……なあ、やっぱり』
無言で首を振る私の頭を
ともはずっと撫でてくれた。
それをコタキチが無言で見ていたのも私たちは知っていた。
114人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:そば子 | 作成日時:2020年1月15日 11時