箒星 【Sho Sakurai】 第１章

8. 登場 ページ8

だから。東京の大学に来て。
おしゃれを知って。
今までしらなかった世界を知って。

自分の容姿が初めて
武器になるって知ってからは。
迷わずにその道を進んできた。

物ごころついたときから
何にもいいことなかった私に。
きっと神様が唯一与えてくれた
天分だと思ったから。

それを最大限に生かして
生きていくことは
正しい道なんだって
今でも思うから。

「屈折してるなぁ、Aは」って
よく亜衣には言われるけど。


亜衣にはわからない。

幸せな家庭で育ってきた
亜衣にはきっと一生わからないよ。




....いけないっ
難しい顔してしまってたかも(＞＜)

スマイル、スマイルっ Aっ








その時だった。

突然ノックされた個室のドア。



「ごめんっ おまたせっ...
　 え...っ？！」



と同時に。

あわてた風の一人の男性が入ってきて。
私たちを見た瞬間びっくりし始めた。





...え.....






”合コン”って。
わかってきたんだよね...？

だとしたら。


よっぽどのウケ狙いの確信犯か。
本当にダサイ人に違いない。





深くかぶったキャップにメガネ。
ジーンズにシャツにパーカーと
恐ろしく恰好悪い。



...カッコ悪いけど...




メガネの奥のその瞳は。
大きくてキラキラとしていて。

よくみるとかわいらしい顔。童顔。
すっと通った鼻。
身長も高すぎず低過ぎず。
なで肩だけど。どこか漂う品の良さ。

ルックスだけなら９５点。




だ、だれ...？！




服装とのギャップも構わずに。
思わず見とれてしまってたら。
お向かいの盛り上げくんが声をかけた。





「翔っ」

「っ、優太っ これ、
どーいうことっ？！」




...合コンだって。
知らないで来たんだ...



オロオロしてたその男性は。
少し状況を理解したのか
私たち女性陣に向かって。
キャップを取りながら
あわてて一礼してきた。

それを機に次々に声があがる。



「翔、久しぶりっ」

「雅樹っ、元気してた？
お、健介も(^^)」

「おおっ 櫻井っ
久しぶりーー(^^)」

「加藤先輩っ お久しぶりですっ」



....ふぅん、NY帰りの後輩で。
盛り上げくんの友人。か。
同じくK大卒なのかな？



と同時に。

にわかに私の隣の女の子達が
キラキラした瞳に変わって
ざわめき始める。

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