箒星 【Sho Sakurai】 第１章

29. 仏心 ＜S side＞ ページ29

「...こんばんは。」

「.....こんばんは」





微妙な空気。

こんなところで。
こんな風に出くわすなんて。
思ってもみなかったような
顔してる北田さん。



俺だってそうだよっ。

できれば。二度と
会いたくなかったけど。
そういや家近所だったっけ....



清楚なワンピに。
今日もきれいに巻かれた髪。
会社帰りってカッコじゃねぇよな。










ということはたぶん.....






「....合コン帰り？」

「そうですけど。何か？」

「い、いや、別に.....」





かーっ(怒) そっけない即答。

かわいくねぇーな、やっぱりっ(怒)



失敗。仏心だした俺が
間違ってたよ。

彼女だって
俺に助けてなんて
もらいたくねぇだろ。







そのままその場を
後にしようとしたその時。


目の前で立ち上がろうとして。
またよろけ座りこんでしまった北田さん。


思わず。その腕をバッと
掴んでしまってた。


これ以上関わりたくねぇのに。
怖ぇーな、反射神経って(苦笑)

見ると足元には
折れたヒールと靴が転がっている。





....ムリだろ。一人で歩くの。


彼女がとんでもねぇ人だとしても。
やっぱこのままほっとくことは
できねぇよ。





「つかまって」

「だ、大丈夫ですっ。いいですからっ」

「そんなんじゃ立てねぇし
歩けねぇでしょ？」

「大丈夫ですっ ほっといてくださいっ」





.....ったく....
こまで意地っぱりなんだよっ★





もうそれ以上彼女の言葉なんて聞かずに。
折れたヒールと靴を拾って。

次の瞬間彼女の背中支えて。
立ち上がらせて。
俺は一緒に歩き始めた。



「家どっち？送る」

「あ、あのっ」

「こういう時くらい素直に甘えたら？
何も襲いやしねぇーよ、君みたいな人。
こっちから願い下げ。」

「なっ★」




....俺もガキ(＞＜)。

こんなとこでささやかな
復讐なんて(苦笑)。

でもさ。言われっぱなしも悔しいし。




俺のセリフに一瞬だけ
面食らったみてぇだけど。



「.....右に。お願いします」



抵抗することはもうやめて。

それ以上何も言わずに北田さんは。
黙ってリードする俺について歩き始めた。

30. 呼び止め ＜S side＞→←28. 三度目 ＜S side＞

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す