箒星 【Sho Sakurai】 第１章

17. 減点と加点 ページ17

「じゃあ。おやすみなさい」

「....はい....
おやすみ、なさい....」




櫻井さんを乗せて。
去って行くタクシー。

なぜだか小さくなるまで
見送ってしまう。







....びっくりした。




急ブレーキで。
もたれかかってしまった
櫻井さんの胸。

いい匂いで。アイドルだから
華奢なのかなって思ってたけど。

意外に硬い胸板に
思わずドキッとして。


でも髪がからまっていることに
気づいて。ハッと我に返って。

程なくして。
私のマンション前に
到着したタクシー。


降りるのか降りないのか。
怪訝そうに私達を見てる
運転手さんの視線も感じて。


肝心の櫻井さんは
オロオロするばかりで
(その対応、マイナス５点)。





....あーっ、もうっ...！！




そろそろ少し短くしようと思ってたし。
別にいいやって。
なんなら切っちゃえって出したハサミ。


一つ切って。あともう一つ。


そう思ってハサミを構えたその瞬間
聞こえてきた声。


え？って。手が止まったと同時に。
私からハサミを奪って。

何のためらいもなく
自分のシャツのボタンを
切った櫻井さん。



からまった髪の毛と一緒に。
はらりと落ちたボタンを
反射的に受け止める。





.....うそ.....っ。

きっとそのシャツ。
(センスはイマイチだけど)
高価なものだよね....？




でも。そうした後の櫻井さんは。
少しホッとした表情で。
私にハサミを返してきた。





......前言撤回。
意外にやるじゃん。

プラス５点。
トータル現状復帰の４３点(笑)。

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