箒星 【Sho Sakurai】 第１章

16. いさぎよさ ＜S side＞ ページ16

気付いて。
一生懸命北田さんは
ほどこうとするけれど。

そんなことお構いなしに。
再び車も走り出したもんだから。

全然うまく外れなくて。



「ちょ、ちょっと待ってくださいね」

「う、うん....」




でも彼女があせればあせるほど。
うまく取れずにむしろどんどん
からまっていくように見える
髪とボタン。



そうこうしてるうちに。
車は北田さんのマンションの前に
到着した。


....マジでうちから近いんだ...




いけねっ
そんなこと考えてる
場合じゃねぇや★

そう、今はこの状況を
打破しなくちゃいけ...
えっ....？？！！




その瞬間。バッグから
ソーイングセットを取り出して。

小さなハサミを手に。
からまっている自分の髪の毛を
切ろうとしてる北田さんの姿が
目に飛び込んできた。



「....あっ！！」




そう叫んだと同時に。

”シャキンッ！”という
小気味よい音とともに。
はらりと落ちたひと房の髪。






今...切った、の...？！




びっくりして。
北田さんの顔を反射的に見たら。


もう一つのボタンに
からまった髪の毛を
また切ろうとハサミを通している
彼女が目に入って。




「....っ！！ま、待ってっ！！」

「え？」

「そんなキレイな髪っ、
もう切っちゃ駄目だよ！」





どっからそんな勇気出たんだろう。

今思えば。もうほとんど
衝動的に行動してた。





そう叫んだと同時に。
彼女からハサミを奪って。


彼女の髪が絡むシャツの
ボタンを切っていた。

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