6. Spring Magic [KAZU] ページ19
身長だって。
すごーく高いわけじゃないし。
パッと見、目立つ方でもない。
ちょっぴり猫背だし。
どちらかというと
青白い顔してるし。
私服だと私の方が
はるかに年上に見られちゃうし
(イヤ、実際年上なんだけど)。
かなりのゲームおたくだし。
仕事もルックスも営業NO.1の
松本くんみたいに熱くないし。
人事の櫻井くんみたいに。
見るからにデキる男でもない。
でも。
言うなれば。
そつなくデキるオトコ。なんだ。
すっと通った鼻。
時々アヒルになる
かわいらしい口。
軽くまくったYシャツの、
袖口からのぞく
かわいらしい手。
そのくせ。
メガネ外すしぐさは
妙に色気があって。
何に考えてるのかわかんない
きれいな茶色い瞳。
仕事だって。
いつやったのってくらい
さりげなーくきちんと終わってて。
でも。
私のリビングの全身鏡の前で。
ネクタイ結んでるニノちゃんが
一番好きだったりする。
今朝もそう。
時折腕時計を
チラリと見ながら
器用に結んでいく
その姿に見とれて
つい支度が遅れた私に。
「はーやーくー」って。
せかして。とがらせた唇に。
昨夜のキスを思い出して。
ドキドキしてしまった。
あー...ズルイな ニノちゃん。
付き合って。
もう１年近く経つっていうのに。
まだこんなこと思わせるなんて。
だから。
やってきた桜の季節。
私は心底落ちつかなくなってる。
”心の底”と書いて。シンソコ。
誰かがニノちゃんの魅力に
気付いてしまうんじゃないかって。
新しく入ってきた、
私よりずっと若くて
かわいい女の子が
あなたの瞳をとらえて
しまうんじゃないかって。
恋愛感情、まではいかなくても。
ニノちゃんのこといいなぁ、
って思ってる子、
ひそかに知っているから。
自信なんて。
余裕なんて全然ないの。
思えば。
私とニノちゃんの始まりなんて。
本当に些細なことからだったから。
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作者名：かこ
| 作成日時：2017年3月15日 15時
